◆毎秒1ペタビット、50km の世界最大容量光伝送に成功

【情報通信】 (2012/10/25公開)
大学院情報科学研究科 メディアネットワーク専攻
齊藤 晋聖(さいとう くにまさ)准教授


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長距離、大容量光ネットワークを実現する空間多重光通信技術


 総務省統計によれば、近年のFTTH(光ファイバによる家庭向け情報通信サービス)やスマートフォンの普及に伴うブロードバンドサービスの急速な発展とともに、通信トラヒックは年率1.2 倍(10 年で約10 倍)のペースで増え続けています。通信トラヒックの急増に対応する光ネットワークの大容量化は、これまで、光ファイバの基本構造は変えずに、光通信システム装置の大容量化を実現することにより経済的なインフラを実現し、ブロードバンドサービスの普及を支えてきました。現在の大容量光ネットワークの基盤となっている光ファイバは、1 本の光ファイバに1 つのコア(光信号の通路)を持つもので、毎秒1 テラビット容量を長距離伝送する光ネットワークが実用化されています。しかし、トラヒックの増加率から、将来の通信トラヒックへの長期的な対応が課題とされていました。
 このような中で、デンマーク工科大学(DTU)の 盛岡敏夫教授(元NTT 先端技術総合研究所)は、トラヒック増加を支え続ける長距離大容量光ネットワークの実現に向けて、1 本の光ファイバに複数のコアを持つマルチコア光ファイバ等を含む新しい空間的な構造を持つ光ファイバを用いた空間多重光通信技術の研究開発を提唱し、以来本分野を牽引してきました。本提案は、最近の光通信システムの大容量化に関する世界的な研究開発の潮流になりつつあります。日本発の本提案の有効性の確認に向け、NTT、フジクラ、北大、DTU は、産学連携により、これまで、それぞれの持っている技術を結集し、空間多重光通信技術による実現目標領域(図1)を目指して、マルチコア光ファイバ設計・製造技術やその性能を極限まで引き出すための伝送技術の研究を進めてきました。


図1 空間多重伝送技術を用いた大容量伝送技術の提案と本成果の位置づけ

毎秒1 ペタビットの大容量光伝送を世界で初めて実現!


 光通信システムの大容量化を実現するために、今回、コアをほぼ同心円状に配置しい新しい構造の12 コア-マルチコア光ファイバ、および入出力デバイスを開発し、各コアに高密度に波長多重可能なデジタルコヒーレント光伝送技術を適用しました。コアの新しい配列により、従来課題であったコア間の光信号の漏れ(クロストーク)を低減しています。さらに、光の波の性質(位相・偏波)を用い、多数の信号の伝送を可能とする偏波多重32 値QAM デジタルコヒーレント技術を用いることで、コアあたりの伝送効率を、従来のマルチコア光ファイバ伝送と比較して、4 倍以上に高密度化することに成功しました。
 この結果、1 コアあたり毎秒84.5 テラビット伝送容量(= 1 波長あたり380 Gbps 容量 x222 波長チャネル)を実現し、12 コアのマルチコア光ファイバ1 本で総容量毎秒1.01 ペタビット(=12 x 84.5 テラビット)の信号を52.4km にわたり伝送可能であることを実証しました。それぞれのコアにおいて通信品質を示すQ 値が非常に均一であることから、コアごとの伝送品質のばらつきやエラーのない高品質の通信が可能であることを示しています(図2)。
 今回の成果は、これまでの従来の光ファイバを用いた研究レベルの伝送容量記録に比較して10 倍以上の大容量化を実現するとともに、空間多重光通信技術による実現目標領域においてマルチコア光ファイバを用いた伝送容量の世界記録である毎秒305 テラビット(テラは1 兆)伝送(伝送距離:10km)を更新し、1本の光ファイバで、毎秒1 ペタビットの大容量光伝送を世界で初めて実現しました。


図2 実験結果

 1 本の光ファイバに複数のコアを持つマルチコア光ファイバでは、従来ファイバと同等以上のデータの低損失特性を実現するとともに、コア間の光信号が互いにもれて交じり合うこと(クロストーク)を十分低減することが重要となります。しかしながら、従来構造のマルチコア光ファイバは、コア数を7以上にするとクロストークによるコアあたりの伝送効率の劣化が課題となっていました。
 今回、フジクラと北大は共同で、12 個のコアをほぼ同心円状に配列した新しい構造(非六方細密構造)のマルチコア光ファイバを設計しました(図3)。隣接するコア数を左右1個ずつの2つにすることで従来構造のマルチコア光ファイバに比べてクロストークを低減することが可能となり、低損失特性との両立を可能としました。NTT がファイバ特性を評価した結果、各コアの光信号の損失特性は、従来の光ファイバとほぼ同等であり、コア間のクロストークもほぼ設計値以内で低減でき、コア間の各特性が均一なマルチコア光ファイバが実現できていることを確認しました。


図3 12コア-マルチコアファイバ

既往の通信インフラの1000 倍の大量データ通信を可能にする技術


 今回の実験を通じて、光ファイバ自体の伝送性能を、現在実用化されている商用技術の1000倍以上に飛躍的に向上させる革新的な光通信システム実現のキーとなる要素技術を開発しました。光ファイバの空間的な構造の自由度を駆使する本技術を発展させ、光増幅技術等との連携により、さらなる長距離化の実現を目指すとともに、本技術により、今後のブロードバンドサービスの発展を支え続ける将来の長距離大容量光ネットワークの実現に貢献していきます。

その他


特許の番号、特許名
特願2011-076913「マルチコアファイバ」
特願2011-098687「マルチコアファイバ」
特願2012-009459「マルチコアファイバ」
特願2012-134673「マルチコアファイバ」
特願2012-153848「光学入出力デバイス」
特願2011-193403「通信用マルチコアファイバ」


Update 2016-12-14
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