◆カーボンナノチューブ/ナノファイバーの高効率製造法

【ナノテクノロジー・材料】 (2012/07/25公開)
大学院工学研究院 有機プロセス工学部門
向井 紳 教授・荻野 勲 准教授

CNT/CNF の生産性を飛躍的に向上させる


 カーボンナノチューブ/ナノファイバー(CNT/CNF)は軽量でありながら機械的強度、導電性が高く、フィラーや導電性付与剤としての大きな需要が見込まれています。しかし、製造コストが未だに高く、本格的な普及が遅れています。
 CNT/CNF は鉄等の遷移金属のナノ粒子を触媒として、ベンゼン等の炭化水素からCVD 法により製造されています。触媒となるナノ粒子は、反応器内で発生させる必要がありますが、発生させたナノ粒子の活性化が難しく、CNT/CNF の生産性を向上させることは困難でした。向井教授・荻野准教授は触媒へのエネルギー伝達法に問題があると考え、触媒に効率よくエネルギーが伝わるように原料の導入方法を工夫したところ、発生する触媒の活性が非常に高くなることを見出しました。これによりCNT/CNF の生産性を飛躍的に向上させることが可能となりました。

炭素源に溶解させた触媒をパルス状に反応器へ


CNT/CNF はフェロセン等の有機金属を熱分解させて発生するナノ粒子を触媒として利用し、発生するナノ粒子をベンゼン等の炭化水素と接触させて製造されます。従来の製造法では、触媒の原料もCNT/CNF の炭素源もともに気体として反応器に供給していましたが、気体は密度が低い上に温度を上げることも難しくなっています。従って発生する触媒の密度も低くなり、その活性化も難しく、そのためにCNT/CNF の生産性を向上させることは困難でした。

向井教授・荻野准教授は触媒の原料を液状の炭素源に溶解させ、得られた液を反応器内の高温表面と接触するようにパルス状で導入すると、固体液体間の高い熱伝導性により原料に効率よくエネルギーが伝わり、その結果従来法の問題は解決できると考えました。実際にCNT/CNF の製造を試みたところ、CNT/CNF の生産性を飛躍的に向上させることに成功しました。

液状原料をパルス状で導入するため、液パルスインジェクション法(Liquid PulseInjection (LPI) Technique)と名付けたこの方法により得られるCNT/CNF は次のような特徴を有します。

①生産効率が高い
LPI 法によるCNT/CNF の生産性は原料に用いる炭化水素に依存しますが、製造に適している芳香族炭化水素を用いれば80%以上の炭素収率での製造が可能です。
②非常に長い
LPI 法で発生する触媒の活性が非常に高いため、CNT/CNF の成長速度は非常に大きくなり、その結果製品CNT/CNF の長さは非常に長くなります。CNT/CNF は長いと少ない添加量でも補強効果や導電性付与が期待できます。
③原料を選ばない
LPI 法で発生する触媒の活性が非常に高いため、不適とされていた炭化水素からでもCNT/CNF が高い効率で製造可能です。例えば廃油からでも70%近い炭素収率でCNT/CNF が製造可能です。
④質が高い
微小径の製品は2000℃程度の熱処理(従来よりも数100℃低い温度)で理想的な構造を有するMWCNT となることが示すように、LPI 法で製造したCNT/CNF は熱処理をしない段階でも炭素網面が繊維軸に沿って比較的良好に配向しています。従って熱処理をしない段階でも高い強度と導電性が期待できます。


LPI法で作製したCNFの電子顕微鏡写真

製造コスト低減による市場の広がり期待


 LPI 法で得られるCNT/CNF は従来考えられていたフィラー、導電補助剤等の用途に利用可能です。また製品は長くて質が高いため、従来のCNT/CNF よりも少ない添加量で同じ効果が得られることが期待できます。さらに製造コストを9割以上カットできる見込みがあるため、今まで値段が高価すぎるため利用が困難であった分野にも利用できる可能性が拡がっています。

その他


特許第3071536 号「炭素繊維」、 特許第3071571 号「気相法炭素繊維の製造方法」
特許第3117523 号「気相法炭素繊維の製造方法」、特許第4156978 号「炭素繊維の製造方法」


Update 2017-09-15
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