研究者紹介

【ナノテクノロジー・材料】 (2012/06/25公開)

◇山田 卓司 助教 大学院理学研究院 附属地震火山研究観測センター

地震に関する話題と見直される地震発生メカニズム


山田 卓司 助教


幼い頃に抱いた疑問探求のために研究者を目指す


昨年3 月に発生した未曽有の震災は、人々に地震とそれに伴って発生する津波等、自然の猛威を見せつけました。地震の研究者の間でも、昨年の震災以降、それまで想定されていた地震発生のメカニズムを根底から見直さざるを得ない事態になったそうです。
 今月ご紹介する地震学の研究者山田助教は、まさにこの地震研究の渦中に身をおき、地震発生の際に地球を伝わる地震波の観測から、地震の特徴や将来発生する地震の規模等を推測する研究をされています。
 山田助教が地震学の研究者を志したのは、まだ幼少のころだったそうです。横浜に育って、何度となく地震の揺れを体験しながら、幼いながら地震はなぜ発生するのか疑問を持たれていました。その理由を知りたいと小学生の頃には地震学の研究者を目指していたそうです。中高一貫校へ進学され、当然のことのように大学を目指しましたが、物理には人一倍力を注いだそうです。しかし、一方で高校生の時まで、ピアノのレッスンも受けていたそうで、意外な一面もお聞かせ頂きました。
 晴れて京都大学の理学部に入学。1 年の時に受けた概論の授業で、後に研究室に所属することになる先生の講義を受講し、大いに触発されたそうです。それまで、幼少の頃の素朴な疑問から目指した地震研究者への思いが、研究者を一生の仕事とする確信に変わったそうです。
 その後、大学院を卒業し、研究者としては英語が必須との考えから日本を離れ、周囲に日本語に触れる機会の少ない米国(ボストン)の大学で研究者生活をスタートされています。さらに、火山と地震の宝庫ハワイで研究を続けられ、2 年前から本学地震火山研究観測センターに勤務されています。

地震の波動伝播から読み取れること


 山田助教の研究対象は、震源で発生した波動をつぶさに観測することによって、人間が肉眼では見ることのできない震源の近くでの力の分布を推定しようしています。地震はある断層面での急激なすべり運動ですが、断層面上の力の分布は、地震が発生した際、その地震が小さな地震で終わるのか、大地震になるのかを決める重要な要因の一つです。過去に発生した地震の波形を詳しく調べると、その地震の特徴が分かるとともに、地震が発生した場所の力の分布を知る手がかりが得られます。こうした分析の積み重ねにより、地震発生の準備が進むエリアで、あるエネルギーの地震が発生した場合、地表でどの程度の揺れが発生するかを推定することができます。


図は ある地震の断層面上の複 雑なすべり分布。力の分布が複 雑であることを示唆している

地震に関する話題と見直される地震発生メカニズム


 さて、門外漢としては「地震予知は可能か」という点に興味が持たれるのですが、結論としては、期待されるような予知は現段階では難しいということでした。それは、地震は地球の力のバランスの崩れから発生するため、その時間軸も地球時間で捉えなければならないためです。現在の地震の長期予測が「30 年以内に何パーセント」とあいまいになっているのは、そのためです。例えば、地震は周期的に発生しているとの説もありますが、数百
年の周期である場合、人間がその仮説を検証することは非常に難しいことになります。
 また、昨年の震災が、1995年に発生した阪神・淡路大震災に比べて建物被害が少なかった理由もお尋ねしました。地震発生のエネルギーそのものは、昨年の大震災が、阪神・淡路大震災に比して1000 倍ものエネルギーだったそうです。しかし、地震波動の研究者の立場で説明すると、エネルギーの大きな地震程、家屋に被害をもたらす「ガタガタ」揺れる波よりも、高層ビルを大きく揺らす「ゆらゆら」揺れる波が多く震源から伝わってくるそうです。
 さて、冒頭でふれたこれまでの想定を見直さなければならない事柄のひとつが、沈み込むプレートにかかる力です。これまでは、沈み込むプレートの入口部分には大きな力がかかっていない、すなわち、地震時に大きな地震波を出さないと考えられていました。しかし、昨年の大震災では、そのプレートの入り口部分の地表の近い部分に大きな地震滑りが起き、巨大な津波を発生させたことが解っています。その意味で、地震の発生のメカニズムについて、地震時の摩擦熱の重要性を考慮した新たな仮説なども立られています。

地震火山研究観測センターのアウトリーチ活動


 地震火山研究観測センターでは、えりも町に観測施設があるというご縁もあって、えりも町と理学研究院の間で連携協定を締結しています。センターの研究者が、えりも町で地震の発生メカニズムを一般の方に分かりやすくお話させていただいたりしています。また、地域や企業等の防災訓練などに合わせ、地震発生の際の対処についてお話させていただいたりと、アウトリーチ活動も積極的に行っています。山田助教の印象としては、本学地震火山研究観測センターは、全国の同様な施設の中でも、積極的にアウトリーチ活動を展開していると話されています。

研究紹介


山田助教のHP :http://www.sci.hokudai.ac.jp/~tyamada/
地震火山研究観測センターのHP :http://www.sci.hokudai.ac.jp/isv/


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