研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2012/05/25公開)

◇近藤 亨 教授 遺伝子病制御研究所、病因研究部門、幹細胞生物学分野

「観ること」にこだわりを持ち、幹細胞を理解する


※左から二番目が近藤教授


黎明期の細胞工学に未知領域の可能性を見出す


 近藤教授は、大学院生として所属した大阪大学細胞工学センターで岡田善雄教授に師事されました。当時まだ黎明期だった細胞工学の研究に携わることで、今まで誰も知らなかった生命現象を発見することの喜び、それを解明する楽しさ、それが新しい治療法につながる可能性を目の当たりにし、研究こそがご自身が打ち込める仕事であると思われたのが、研究者となったきっかけだそうです。そしてこの思いは、その後従事した細胞死研究(大阪バイオサイエンス研究所・長田重一部長(現京都大学教授)の研究室)とオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いた細胞生物学研究(ロンドン大学MRC 研究所・Martin Raff教授の研究室)により確信へと変わりました。

組織幹細胞の変化—癌化と老化—に注目する


 発見の喜びが感じられる「目で観える」研究、即ち顕微鏡で変化を観ることができる「細胞」を用いた研究にこだわっておられます。
 現在、次の2つのテーマを中心に研究を進められています。
1.ガン幹細胞研究
 幹細胞の能力を有するガン細胞「ガン幹細胞」は、抗ガン剤や放射線療法に抵抗性
を示し、ガン根治のための新たなターゲットとして現在注目されています。
 研究室では、中枢神経系の悪性腫瘍グリオーマに存在するガン幹細胞「グリオーマ幹細胞」の解析を進めています。試験管内(in vitro)で作製したグリオーマ幹細胞の遺伝子発現を網羅的に調べ、グリオーマ幹細胞で特異的に発現している(スイッチオ
ンになっている)細胞膜タンパク質Glim(灯火を意味する仮称)を発見しました。(論文未発表。前職の理化学研究所から特許出願中。)
 ガン幹細胞はその形だけでは他の細胞との区別が難しいですが、Glim タンパク質をガン幹細胞の“目印”にすれば他の細胞との区別が簡単にできます。このため、ガン幹細胞の振る舞いがよくわかるようになり、今後のガン幹細胞の研究が更に進展すると思われます。
 またGlim がガン幹細胞の悪性度を制御していることも明らかとなり、Glim をターゲットにした新たな抗ガン剤の開発が期待できます。
2.幹細胞の老化研究
 生体を構成する細胞の多くは幹細胞から生まれ、やがて老化し死滅していきますが、各種細胞の生みの親である幹細胞自身もまた老化を免れません。細胞の老化は加齢に伴う様々な疾患の原因にもなり得ます。研究室では老化した中枢神経系前駆細胞の遺伝子発現を網羅的に調べ、細胞老化により発現誘導される遺伝子Ecrg4 を発見しました。Ecrg4 は分泌タンパク質として神経系細胞に老化を誘導します。
 現在、このEcrg4 が細胞老化を誘導するメカニズムや、Ecrg4 と神経変性疾患との関連について研究を進めてられています。

自身の研究分野にこだわりつつ、新領域は外部と連携する


 近藤教授の研究室では幹細胞/前駆細胞の基礎研究を行っていますが、これらの結果は様々な疾患の原因の解明に繋がる可能性が高く、そこから生み出される新規治療法は社会に還元できるものと期待されます。企業との共同研究は、この実現化に必須とお考えです。
 また、研究室は「自分の目が行き届く範囲」(ご自身の目で実験結果を観ることにこだわりをもたれています)で運営したいとお考えで、現在、神経系の領域に集中して基礎研究を行っています。このため、例えば消化器系のガンなどに研究が発展しそうな場合は積極的に当該分野の専門家と共同研究を行い、効率よく研究を進めたいと考えていらっしゃいます。

 近藤研究室では、幹細胞/前駆細胞の生物学や加齢に伴う疾患発症のメカニズムと新しい治療法の開発に興味のある学生、大学院生、共同研究者を募集しています。気軽にご連絡ください。

研究室ホームページ


http://www.igm.hokudai.ac.jp/stemcell/
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