研究者紹介

【ナノテクノロジー・材料】 (2012/12/25公開)

◇本橋 輝樹 准教授 大学院工学研究院・物質化学部門

様々な元素を駆使した無機材料化学の研究に魅せられて


様々な元素を駆使した無機材料化学の研究に魅せられて


 大学3年時の無機化学の講義にて、身の回りの無機材料が様々な元素の組み合わせにより成り立っていることを学びました。自然が創り出した「芸術品」ともいえる機能性材料を自分の手で探し出してみたいと思い始め、無機材料化学の世界に足を踏み入れました。後期博士課程の時、周りの先生の反対を押し切って困難な実験を約1年がかりで計画・実施・達成したことが研究者を目指すきっかけになりました。研究室報告会の際、この先生に「申し訳ない、まさかこの実験が成功するとは思わなかった」と声を掛けて頂き、これが信念を持って研究することの自信に繋がっています。

マンガンを主成分とする新規酸素貯蔵材料の創出とその応用展開


 本研究では、顕著な酸素吸収放出を示す「酸素貯蔵材料」を開発し、環境・エネルギー分野における新しい応用開拓を目指しています。マンガンなど遷移金属を含む金属酸化物は温度・ガス雰囲気に応じて酸素量が変化する現象(=酸素不定比性)を示すことから、電磁気的性質を研究する上で酸素量制御の重要性が古くから認知されていました。私の研究では、この酸素量変化自体を物質の機能性と考え、顕著な酸素吸収放出現象を酸素が関与する化学反応に活用することがポイントです。
 最近、マンガンを主成分とする酸化物において2種類の新規酸素貯蔵材料:BaYMn2O5+ ( = 0 ~1) およびCa2AlMnO5+ ( = 0 ~0.5) を開発しました(図1および2)。両物質とも比較的低温で多量の酸素を高速可逆に吸収放出します。いずれも一つの金属サイトに2種類の元素を含むペロブスカイト酸化物であり、構成元素を複合化したことが顕著な酸素吸収放出特性の起源となっていると考えています。酸素は人類の生活に不可欠な数多くの化学反応に関与しており、酸素貯蔵材料による酸化還元の精密制御は大きな影響力を持ちます。本研究で開発した材料の酸素吸収放出特性を利用して、化学原料合成のための酸化還元触媒や、酸素ガス製造・濃縮技術などへの応用が期待されます。



図1.(左)BaYMn2O5+の結晶構造.(右)500Cにおける熱重量分析 (TG) データ。
10分間隔で雰囲気ガスを酸素5%水素に切り替えて100サイクル繰り返した。100サイクル後でも特性の劣化が全く見られない。



図2.(左)Ca2AlMnO5+ の結晶構造。右)温度変化時におけるTG曲線(大気中および酸素気流中)。
ΔT = 200℃の温度スイングのみで2.7 wt%もの多量の酸素を高速・可逆に吸収放出することが確かめられた。

新たな産業創成のためには大学と企業のシナジー連携が不可欠


 革新的材料の開発など新たな産業を創成するには、大学と企業が互いに相乗効果をもたらしながら連携することが強く望まれます。私たちの大学研究では、新しい技術の「萌芽」を見出しながらその技術をどのように実用化へ展開すべきかわからず、学術的成果のみに終わることが多々あります。このような貴重な学術的知見を産業化に繋げて社会貢献するには企業の助けが不可欠です。したがって、両者の橋渡しを担うTLOの重要性は今後ますます高まると考えられます。

その他


北海道大学大学院工学研究院物質化学部門 構造無機化学研究室
URL: http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/strchem/


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