◆組み換えタンパク質の大量発現方法 ~バイオ医薬品等の大量製造技術~

【ライフサイエンス】 (2012/12/25公開)
人獣共通感染症リサーチセンター
鈴木 定彦 教授

バイオ医薬品製造現場のコストダウンに貢献する大量培養技術


 組み換えタンパク質(人為的にアミノ酸配列を変更したタンパク質)を大量に得るには、通常、その設計図となる外来遺伝子をホストとなる細胞(宿主細胞)に導入して、宿主細胞内で組み替えタンパク質を作らせる(外来遺伝子を発現させる)作業を行います。CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来の細胞)はエリスロポエチンなどバイオ医薬品の製造でも使われている安全性の高い優れた宿主細胞ですが、今後、市場の伸びが期待されるバイオ後発医薬品等の製造にあたっては、市場のコストダウン要求に応えるため、CHO細胞でタンパク質をもっと効率的に大量に作るための技術改良が必要です。

マーカー遺伝子に意図的な工夫を加え、発現効率の良い細胞を選択的に抽出する


 このような背景から、鈴木教授の研究グループでは、扶桑薬品工業(株)と共同でCHO細胞に導入する遺伝子に工夫を加えました。
 目的の組み換えタンパク質の設計図となる外来遺伝子を細胞に導入する際には、通常、マーカー遺伝子と呼ばれる他の遺伝子も一緒に導入するようにします。こうすることで、外来遺伝子が無事導入された細胞のみを、マーカー遺伝子の発現有無を指標にして集めることができます。鈴木教授は、このマーカー遺伝子に注目し、意図的にマーカー遺伝子の翻訳効率を悪くする工夫をしました。ほとんどの細胞ではマーカー遺伝子の発現が減少しますが、一方で発現が減少しない細胞も僅かに得られます。このような細胞の中では、導入した外来遺伝子とマーカー遺伝子が「ホットスポット」と呼ばれる染色体領域に偶然入り込んでおり、その結果、導入した遺伝子の発現が非常に活発な状態になっています。このような細胞だけをマーカー遺伝子の発現を指標に選択回収することで、外来遺伝子の発現が非常に活発な(即ち欲しい組み換えタンパク質が大量に作られる)細胞を容易に得ることが可能になります。
 この技術を用いて、CHO細胞でエリスロポエチンやインターフェロン等の製造を試みた結果、従来の方法と比べてコストを1/5~1/10に削減することに成功しました。

組み換えたんぱく質の大量製造や特定のたんぱく質の発現に活用


 本技術は、共同開発者である扶桑薬品工業(株)が中心となって事業化を検討しているタンパク質の他に、様々なタンパク質の製造にも応用が可能です。
 鈴木教授は本技術の特徴を生かして、組み換えタンパク質が大量に必要な企業と北大、扶桑薬品工業(株)の3者でのアライアンスの可能性を探るほか、タンパク質の発現に課題を抱えている研究室からのシーズ発掘など、様々な展開を検討しています。
 もしそのようなご要望がありましたら、ご連絡をお待ちしています。

その他


・研究室ホームページ(人獣共通感染症リサーチセンター 国際疫学部門)
 http://www.czc.hokudai.ac.jp/epidemiol/
・特許出願
1)国際出願番号:PCT/JP2009/053682
「動物細胞を用いて外来遺伝子由来タンパク質を大量に生産するための発現ベクター、およびその利用」
 ※日本、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中国、香港、韓国、オーストラリアに移行済。
2)国際出願番号:PCT/JP2009/071326
「動物細胞を用いて外来遺伝子由来タンパク質を大量に生産するための発現ベクター、およびその利用」
 ※日本、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中国、香港、韓国、オーストラリアに移行済。
3)国際出願番号:PCT/JP2009/071327
「三重螺旋構造を有するタンパク質、およびその製造方法」
 ※日本、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中国、香港、韓国、オーストラリアに移行済。


Update 2016-12-14
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
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