研究者紹介

【ナノテクノロジー・材料】 (2012/03/26公開)

◇石橋 晃 教授 電子科学研究所 電子機能素子研究部門

『トップダウン系とボトムアップ系の接続・統合』という基本概念の提唱


推論と実証の研究者魂は幼少の時から


 今月は、電子科学研究所・石橋晃教授の研究室を訪問しました。最初から単刀直入に子供の頃のエピソードをお尋ねしました。佐賀に生まれ、福岡県の有名な進学校(一学年上に孫正義氏)に進まれ、東大で物理を専攻、民間ではSONY の研究所も勤務された先生の生い立ちに、筆者は以前から少なからぬ興味を持っていました。石橋教授は、いきなりの不躾な質問にも、いつものように温和な表情で淡々とお話されました。
 科学者を目指す最初のきっかけとなったのは、小学4 年生の時に読んだタクラマカン砂漠を探検した冒険家の日記だったそうです。その冒険家が、「10才までに人生の目標を見つけた人は、大変幸運である。」という内容を書いてあったと記憶されています。そのころ、テレビで放映されていた「宇宙大作戦(Star Trek)」へのあこがれもあり、それに触発されるように科学に関する本を読み漁ったそうです。時には、地元の本屋で長時間本の立ち読みしたため、「ここは図書館ではないよ」と店主から優しく諭されたこともあったそうです。しかし、科学者の片鱗を示す本当のエピソードはこれからです。小さいころから本を通して科学に触れられたのですが、それを単なる知識にとどめておかず、そこからご自身で一定の推論を興し、その実証実験まで行ったそうです。例えば、「動いている自動車の進行と直角方向に放物線を描くように石を投げるとどうなるか」と考え、ご自身の推論を証明するために、バスに石を投げたそうです。しかし、手元が狂ってそのままバスの窓ガラスに・・・。教授のご家族にも苦情が入り、大騒動になってしまったそうです。これに止まらず、“飛び込み理論”のプールでの検証実験で、坊主頭の一部が剥げてしまう経験など、大変痛いましくも楽しいエピソードを沢山話しされました。石橋教授の奔放な幼少時代を想像する一方、科学者としての研究姿勢を真摯に貫く、「研究者魂」の原点を垣間見たようでした。

物理学者として上位概念を理論構築し、実証する


 石橋教授の基本構想の一つに「トップダウン」と「ボトムアップ」の接続・統合があります。世の中に存在する有形物の構成原理はいずれかに分類され、その融合からイノベーションが生まれてと考えられます。この理論でよく引用されるのが集積回路の設計です。例えば、集積回路の設計は、人の手による回路設計に基づいてシリコンウェーハー上に回路がプリントされて製造されます。一方、最小単位の構造がビルドアップすることによって、有形物を構築するケースもあります。自己組織化によって一つの機能をもったハニカム膜などが出来上がる現象が一例です。研究室では、現在、トップダウン系とボトムアップ系の接続を図るためにスパイラルへテロ構造を提案し、その近未来の応用として量子十字素子やフォトン・フォトキャリア直交型のフルスペクトル光電変換素子等の次世代デバイスの研究が進められています。
 他方、上記の2つの系の接続・統合をプラットフォームベースでも支えようという発想から生まれたのが、Clean Unit System Platform(略称CUSP)です。CUSPは、超高清浄空間を簡便に、安価に提供することができます。一般にクリーンルームは、大型の研究施設で部屋全体の清浄度を保っていますが、本来は高度な清浄度必要とする部分空間を清浄に保つことができれば十分です。CUSP により、工場などにおいて清浄度を必要とす
る各部分を清浄に保ちながら、積み木のようにつなぎ合わせて行くだけで、必要なラインの清浄度を確立することが可能になります。以上の素子とシステムにより、今後顕在化するAtom, Bit, Environment/Energy(ABE)空間での基幹要素を複数押さえて行きたいそうです。

基礎研究のリスクを低減する産学連携


 石橋教授は、産学連携に関しても本学に着任当時から積極的にかかわられています。着任直後に、本学で開催されていたMOT 講座にも参加されたほか、産業界の方々との交流も意識的になさっています。
 本学として、世界に互する研究を行うことはもちろん、北海道に拠点を置く大学の使命として、地域の企業との連携も重視されています。現在も、地元企業との会話から生まれた研究テーマを発展させ、共同研究をスタートさせる予定です。また、ご自身の研究成果の実践の場として協力者と一緒に自ら大学発ベンチャーを立ちあげられ、大学での教職の傍ら、ベンチャー企業の役員も兼務されています。こうした産学連携を実践されている先生ですが、基本になる考え方があります。それは、大学で行なっている基礎研究の方向が正しいのか、常に社会や産業と対話する必要があり、それによって研究の方向を正しい方向に修正していくという考えです。ベンチャー企業にかかわっているのも、まさに市場のとの対話を欠かさず、ご自身の原点である物理学の成果を“現時点、日本が最も必要としている”ものに振り向けるためと思います。
 石橋教授は、大手企業の中央研究所が出口に近い研究をせざるを得ない現状も理解された上で、大手企業との共同研究に加え、地域の企業、さらには大学発ベンチャーと、それぞれの立場を重視しつつ、それらが一体となって世界と互して戦っていくことを理想的な産学連携の姿と考えていらっしゃいます。そして、その背後には最大の防御壁兼ビジネス構築の土台として力を発揮する知財権(特許)があるとお考えです。

石橋研究室HP

http://qed4.es.hokudai.ac.jp/

研究シーズ

高効率半導体太陽電池
Update 2018-11-09
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