研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2011/11/25公開)

◇南保 明日香 講師 薬学研究院 創薬科学部門 生体機能科学分野

ウイルスと『対話』し、『料理』する


生き物好きな少女から研究者へ


 小学生の頃から理科が大好きで、特に生物に興味を持ち、生き物図鑑の恐竜編、動物編を熟読していたそうです。やがて高校生になると「生物の謎」に関心を持つようになりました。北海道大学を選んだきっかけは、高校生だった頃、当時流行っていた「北の国から」というテレビドラマで、北の大地に憧れたからとのこ
と。そこで北海道大学の理Ⅲを受験し、見事難関を突破しました。
 「研究が面白い!」と思ったきっかけは、学生実験で「分からないものを見つける」という課題に取り組んだ時のこと。「解の無い」ものを探求する事に楽しみを見出したことが研究に進むきっかけとなったそうです。学位取得後は博士研究員、助手を勤め、その後米国に5年間留学して研究を行ないました。そこで出会ったのがエボラウイルスでした。
 米国の大学ではとても良い研究環境に恵まれ、例えば研究者であれば立場に関係なくディスカッションすることができ、また分からないことがあればその分野に精通する研究者をすぐに紹介して貰えたので、スムーズに研究を進めることが出来たそうです。また役割分担が明確で、日本の大学よりも雑務が少ない印象だったとのこと。研究の場において、日本の縦割り社会の文化は弊害となっているのかも知れません。
 それから北大薬学部の講師として着任し、現在もエボラウイルスを中心に研究活動を行なっています。

ウイルスと『対話』し、『料理』する


 『エボラ出血熱』という感染病には聞き覚えがあると思います。「アウトブレイク」という小説が映画化されましたが、これは実話を基にしたノンフィクション小説です。エボラウイルス(図1)は毒性が高く、感染した場合の致死率はなんと90%とも言われ、未だにワクチンや治療薬のない恐ろしいウイルスです。
 ウイルスは自分だけでは増えることが出来ないので、他の生命体の細胞(宿主)に侵入し、その宿主の持つ複製システムを間借りして増殖する、いばわ「寄生体」です。
 エボラウイルスも同様に宿主に侵入して増殖するのですが、その侵入のメカニズムは不明でした。そこで南保さんはそのメカニズムを解明することで、抗ウイルス薬の開発の手がかりになると考え、研究に取り組みました。


 そこで注目したのがエボラウイルスの『大きさ』です。エボラウイルスはインフルエンザウイルスなどと比べると極めて大きいため、それらとは異なる感染経路があると考えました。そして細胞自身が持つ機能で比較的大きな分子を取り込む『マクロピノサイトーシス』という仕組みに着目しました(図2)。
 「直接観測」に拘った南保さんは、野生型のエボラウイルスに似せた非感染性のウイルス粒子を用いて、蛍光物質によりそのウイルス粒子が細胞に侵入する様子を、リアルタイムでモニタリングする事に世界で初めて成功しました(図3(a), (b))。

 ウイルス侵入のメカニズムを明らかにすることで、この侵入を阻害する創薬の研究にも道が開けました。
 南保さんの研究スタイルは、まずウイルスと向き合いじっくり
と『対話』し、その上で自在に『料理』する。
 今後の研究に期待が持たれます!

対岸の火事ではない「エボラウイルス」


 エボラ出血熱はアフリカなどの後進国に見られる感染症と思われがちですが、交通網が発達した今日では、体内に潜伏したまま、知らず知らず日本国内に持ち込まれる危険性が常にあります。また、バイオテロなどに使用されて感染が広がれば、特効薬のない病のため、死を待つしかありません。一方、そうした潜在的な脅威があるものの、日本にはさまざまな理由からBLS4(高度安全実験施設)が無いため、エボラウイルスなどの危険な病原体を扱う研究が出来ないのが現状です。難しい問題ではありますが、人々の安全を確保するため、各国がリスクをどこまで負うかということを、真剣に考える時代になったのかも知れません。


参考

プレスリリース:
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/topics/press_release/101018_pr_pharm.pdf
北海道大学 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局 北海道大学研究シーズ集Webサイト
EARTHonEDGE北海道 DEMOLA HOKKAIDO 創業デスク 北海道大学 産学連携メールマガジン