研究者紹介

【環境】 (2011/08/25公開)

◇長野 克則 教授 大学院工学研究院・大学院工学院

ネットゼロエネルギー建物を目指して


輝かしい実績を残された先輩の足跡を追って


長野教授は北海道・苫小牧市で生まれ育ちました。ノーベル化学賞を受賞された鈴木名誉教授、本学第14代総長で北海道医療大学学長も務められた廣重元総長等を輩出した苫小牧東高等学校のご出身です。修士課程修了後、民間企業の研究所へ勤務されましたが、程なく出身研究室の教授(落藤教授(当時))から誘われて本学に助手として戻られました。

その時の大学の研究室はまだ貧弱なものだったそうです。大きな転換点は、昭和から平成へ年号が変わる前後、時代はバブル景気に湧いていた頃です。当時、地中熱利用ヒートポンプや蓄熱利用などは、世界的にもまだ実証段階でしたが、そのころIEA(国際エネルギー機関)のヒートポンプや蓄熱に関する実施協定のANNEX に日本代表として参加するというチャンスが当時の研究室にあり、実務担当としてその共同研究に参加できたことが、現在までこの活動に参加できている礎となっているとおしゃっています。ANNEX の会議は各国のメンバーが幹事となり世界各地で年2,3 回開催されるそうですが、朝から晩までの打ち合わせに加え、朝食から夕食、さらには2 次会まで行動を共にするため、メンバーとは自然に“同士”という感覚が生まれるそうです。そうした経験を通じて国際共同研究の進め方を身につけられ、ご自身の研究の方向性を見いだすとともに成果の国際水準に対するポジショニングも常に確認できるメリットがあるともおしゃっています。

大学での研究成果や国際活動を基に、平成14 年に(財)ヒートポンプ・蓄熱センター内に「地下熱利用とヒートポンプシステム」に関する技術研究会をリーダーとして立ち上げられました。
年4回、日本各地において泊まりがけで研究会を行い、会員相互の信頼関係の構築にも気を配っていらっしゃるそうです。現在では、公的研究機関、設計事務所、大手ゼネコン、サブコン、電機メーカー、住宅メーカー、電力会社など50 企業以上が加盟する団体に発展して、地中熱ヒートポンプや蓄熱システムに関する主な企業と極めて密なネットワークを築き上げることができたそうです。正に、IEA のANNEX 活動の国内版と言えるものです。

ネットゼロエネルギー建物を目指して


長野教授の研究室の、大きなテーマの一つが、年間を通して自ら必要とするエネルギーを自ら生み出す(自給する)ネットゼロエネルギー建物の実現に関するものです。住宅や業務用建物で消費される民生用のエネルギー消費量は日本全体の33.8%(2010年エネルギー白書)を占めています。省エネという言葉が使われ始めて、工場など生産の現場では、コスト削減が大きなテーマとなり、国内ではかなりの消費量削減が進んでいます。しかし、三分の一以上のシェアを占める民生分野(住宅や商業用建物)のエネルギー消費量の削減余地はまだまだあると言えます。現在すすめられている研究中で、その分野のエネルギー消費量を削減するためのコンセプトは3つです。①冷暖房負荷の低減、②高効率機器の導入、③再生可能エネルギーの導入です。

これら課題の中で、現在の研究の中心テーマは、現実的で、最も導入効果が高いと見られるヒートポンプ、地中熱、蓄熱、除湿の技術を組み合わせた環境設備技術の開発です。地中熱は、平成22 年には国のエネルギー基本計画の中で再生可能エネルギーと位置づけられましたが、現在では国から様々な導入推進施策も施行されるようになり、さらなる普及と市場の拡大が期待されます。

地中熱ヒートポンプに加えて、10年ほど前から北海道の稚内地方で産出される稚内珪藻頁岩の高い自律的吸放湿機能に注目して研究を進めています。長野教授が研究代表者となり、 平成20年からはNEDOの先導研究(3年間、総額2億円)、平成23年からは 実用化研究(3年間、総額7億円)に採択されて、本頁岩を含有するハニカム除湿ローターを搭載した、多熱源対応の冷暖房・給湯・除湿・換気一体型ヒートポンプシステムの開発研究に注力されています。プロジェクトが終了する平成25年度より2年後の市場投入を視野に入れて製造技術の確立や生産コスト低減も課題とする研究開発プロジェクトです。本ヒートポンプシステムを導入すれば、現在のシステムと比べて50%以上の省エネを提供できるというものです。

産業界は大切なパートナー


長野教授はこれまで多くの企業と共同研究を行ってこられましたが、その研究成果は着実に産業に結びついています。これは、研究対象や目標が具体的で、研究室ではシステム解析や実証研究から遡り、それに必要なデバイス、そして機能性材料の研究を行っていることに起因していると考えます。システムや解析手法のオリジナリティに加えて、それに用いるデバイスや材料のオリジナリティーを有していれば、大学の研究として非常に強い存在価値があるという、経験から導き出されたポリシーをお持ちです。そこに、産業界のニーズに基づく応用技術や製造技術が組み合わされると、新しい展開が生まれ、それが先述したNEDOの大型プロジェクトに結びついているということです。

ただし、企業との共同研究は、長年の信頼の上に成り立ち、一朝一夕ではなかなか難しい、ともおしゃっています。その意味で、先に紹介した技術研究会のネットワークは共同研究をする上でも非常に強力なパートナーになっているそうです。しかし、大学との連携に無縁だった企業さんは、大学と共同研究する際のルールをご存知ない場合も多いようです。 例えば、大学の知的情報や活動を、”コストのかからないサービス”とお考えだったり、大学の研究室を単に分析や測定などの”外注先”として考えておられる方もいらっしゃるということです。一方、国立大学法人の研究室が一企業と一緒に汗をかいて研究開発を行うことを、良い意味で「本当にやってくれるの?」と思っておられる企業オーナーも多いそうです。先生は、こうした企業さんとの橋渡しを当産学連携本部の役割として、期待されています。

その他

「知のフロンティア ―北海道大学の研究者は、いま」、北海道大学編著、2010 年
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/nyu/frontier/pdf/09_kougaku.pdf (p.132)

研究シーズ

クラウド版地中熱ヒートポンプ設計・性能予測プログラム”Web Ground Club”と日本全国3次元グリッド地層データベース
北海道大学 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局 北海道大学研究シーズ集Webサイト
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