研究者紹介

【ナノテクノロジー・材料】 (2011/05/25公開)

◇難波 康祐 講師 大学院 理学研究院

有機合成化学の力で世界の不良土壌を肥沃な大地に


人生の転機となった米国留学


 自然界に存在しない分子を自在に創製できる有機合成化学に大きな可能性を見出し、大学4年生の研究室配属時から後博士課程を終了するまで一貫して有機合成化学の研究を行ってきました。研究者となる一つ目の大きな転機となったのは日本学術振興会の特別研究員に採択されたことです。博士課程の途中で採択されたため、学位取得後に一年間採用期間が余ることになりました。折角なので残りの期間の一年間を使って博士研究員としてアメリカに留学することにしました。そこで当時付き合っていた彼女との結婚を決め、二人で米国コロラド州のフォートコリンズという
街で新婚生活を始めました。半年程経ったところで、留学先の教授から、こちらで給料を払うので日本に帰らずにもう少し残って欲しいと言われ、更に一年過ごすことになりました。
 二つめの転機は、そのアメリカ人の教授に、ここにいるよりもハーバード大学に行った方が良いと言われ、ハーバード大学の著名な教授に推薦して頂いたことです。そこで、研究の場所をハーバード大学に移し、さらに2年半を博士研究員としてボストンで過ごしました。そこでの研究で多くの成果が出て、アカデミックの研究者としてやって行く自信がつきました。その教授の推薦もあってか、無事に日本でアカデミックのポジションを得る事ができ、4年半に渡るアメリカ生活に終わりを告げて日本に帰ってきました。渡米する時は2人きりでしたが、帰国する時は4人(一人はお腹の中)になっていました。

有機合成化学の力で世界の不良土壌を肥沃な大地に


 自然界の全ての現象には化学反応が関わっています。生命活動の維持から思考や記憶に至るまで様々な化学反応が関与しており、それらの化学反応には有機化合物(分子)が密接に関わっています。我々は、そういった有機化合物をうまく利用することで自然界に起こる様々な現象を分子のレベルで解明しようと試みています。例えば、全世界の陸地の67%が農耕に適さない不良土壌とされていますが、そのうちの半分はアルカリ性の不良土壌です。このような土壌では鉄イオンが水不溶態となってしまうために、植物は根から鉄を吸収できずに枯れてしまいますが、ある種の植物はそのような不良土壌においても生育することが出来ます。これらの植物は不溶態鉄を溶かすキレート剤を根から分泌することで鉄を溶かして取り込んでいます。我々はこれらの植物の鉄の取り込み機構を明らかにし、特異なキレート剤を肥料として供給することでアルカリ性不良土壌での農耕が実現できると考えています。そこで、鉄の取り込み機構を明らかにするために、様々な機能を持ったキレート剤を化学合成しています。例えば、最近では光るキレート剤を化学合成することによって、鉄イオンが細胞に取り込まれる様子を目で見えるようにすることに成功しました。また、現在ではそのキレート剤を肥料として供給できるような大量合成法の開発を行っています。これらの成果によってアルカリ性不良土壌での農耕が可能となれば、世界の食料危機に貢献できるものと考え日夜学生と共に研究に励んでいます。他にも、医薬・農薬の有効な成分でありながら、自然界には超微量にしか存在しない有機化合物が沢山あります。我々はそういった医薬の候補となる化合物を、安価かつ大量に入手できるアミノ酸や糖などの化合物から化学反応を繰り返すことによって作り替え供給する研究も行っています。さらに、体内での代謝を観測するために様々な色に光る化合物を創り出し、医薬化合物に組み込んだりもしています。このように、天然に微量にしか存在しない化合物や、或は天然には存在しない新たな機能を持った分子を様々な化学反応を駆使することによって作り出すことが我々の主な研究テーマです。

産学連携のために「気の置けない」関係を築きたい


 研究活動を通じて社会に貢献するということは、研究者であれば誰もが望むことであると思います。但し、地位や名誉やお金のために行う研究はもちろんですが、ある特定の社会貢献を目的とした研究も長続きしないと思われます。10年、20年も続くような大きな研究は、やはり研究者自身が非常に面白いと興味を持って行うものでないと長くは続けられません。大事なことは、そういった研究を行いながらも、自分の行っている研究が何かの社会貢献に繋がらないかと常にアンテナを張り巡らせることだと思います。基礎研究を主たる研究テーマにしている多くの研究者は、基礎研究を社会貢献や実用化といった出口に繋げるのが不得意であるかもしれません。ですので、産学連携というのはやはり非常に大事なことだと考えます。我々も、コレはひょっとしたら売れるのではないか?等と考えたりすることが良くありますが、気軽に相談できる詳しい相手がいないので、そのまま思うだけで終わってしまうことが殆どです。

研究環境、研究仲間に恵まれて


 私の所属する研究室では、谷野圭持教授と吉村文彦助教と私の3人の教員、博士課程7人、修士課程10人、4年生4人の計24人からなる研究室です。幸いなことに、当研究室の人気は上々なようで、毎年外部から進学して来る学生もいます。学生達は毎日夜遅くまで頑張って実験をしており、我々は彼らの惜しみない努力に心から感謝しています。

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