研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2010/12/25公開)

◇星野 洋一郎 助教 北方生物圏フィールド科学センター

親子2 代の花卉研究からハスカップとの出会い、転身


親子2 代の花卉研究からハスカップとの出会い、転身


 群馬県の沼田市というところで生まれました。北関東の小さな街で、家はコンニャク芋やシャクヤクの切り花を生産する農家です。ほかにお米や多種多様な野菜を自家消費のために作る自給自足の生活が基本です。5 人兄弟姉妹の長男だったので、自然と将来は農家をやろうと思っていました。高校時代に山岳部に入って高山植物や野生の花の美しさに惹かれたこともあり、将来は切り花の生産をしたいと思っていました。父も通った千葉大学園芸学部に進みました。そこで花の育種の研究をしている先生と出会い、恩師の導きもあり大学院へと進み、だんだんと研究を将来の仕事にしたいと思うようになりました。
 学位を取得後、タイミングよく北海道大学に職を得ることができました。北海道らしい仕事をしたいと思うと同時に家業を継げなかった思いから、農業生産になるべく近いところで研究をしたいと考えています。北海道に来た年にハスカップというベリー(小果樹)に出会いました。食べてみるとすごく美味しい。ハスカップが北海道に自生する植物であると知り、ますます興味が湧いたのでした。そして、この植物を研究してみたいと思ったのです。


ハスカップを求めて湿原を歩く。楽しそうに
見え ますが、実際とても楽しい研究です。


生産現場の課題解決に研究を活かす


 食べて美味しいハスカップですが、やや果実が小さい。これが収穫の手間や労力を増やし、生産現場で問題になっていることが分かりました。また、じゅうぶんに美味しいハスカップなのですが、木によって味にばらつきが大きく、時にはとても苦いもの
もあり、味の改良も必要に感じました。これらを改善すべくハスカップの改良の研究をはじめました。目標は果実を大きくすることと食味を改良することです。
 はじめに行ったことは、北海道各地の野生のハスカップを集めて評価することです。道南の横津岳、苫小牧の勇払原野、釧路湿原、別寒辺牛湿原、霧多布、別海、標津湿原などなど自生地を巡りました(*必要に応じて環境省の許可を得ています)。そこで面白いことが分かってきました。北海道には染色体数の違う二つのグループが存在し、染色体数の少ない2 倍体が道東の釧路湿原と別寒辺牛湿原にのみ自生し、ほかの地域は全て染色体が多い4 倍体でした。果実を大きくするための研究にはこれが非常に重要です。染色体数を増やして果実を大きくする倍数性育種という方法がありますが、この手法を応用するために染色体の基本情報を把握する必要があったのです。この基本情報をもとに、胚乳から植物を作る新しい倍数性育種法を応用し、これまでに2 倍体、3 倍体、4 倍体、5倍体、6 倍体、8 倍体まで作り出すことができました。現在、これらを圃場に移して栽培試験を進めているところです。


ハスカップの収穫風景。北大農場内の圃場で
栽培しているハスカップは、学生実習の収穫
体験にも利用しています。


 食味を改良するための方法についても少し紹介したいと思います。ハスカップの近縁種にミヤマウグイスカグラ・ウグイスカグラという植物があります。これらは非常に美しい赤色の果実がなり、食べると爽やかな酸味と適度な甘みがあります。これらがハスカップの食味改良の材料になると考えました。ハスカップと種間交雑を行い、雑種を育成しています。この雑種植物はようやく昨年から果実がなり出しました。まだ幼木の段階ですが、なかなか美味しい果実ができそうです。
 ハスカップの研究について紹介してきましたが、北海道で栽培できるベリー類に範囲を広げ、北海道産の野生キイチゴを育種素材に用いた北海道で栽培しやすいラズベリーの育成やシーベリーの研究も進めています。
 他にも私達の研究グループでは花卉園芸作物のアルストロメリア科植物を材料に遠縁交雑に関する研究や、受精の仕組みを解析して新しい育種技術に役立てるための基礎研究を行っています。


企業との出会いが新たな市場開拓に


 ハスカップを広めるために(ファンを作り、販路開拓に結びつける)、ハスカップを加工した魅力的な商品の開発が必要だと考えていました。そこで縁あって「きのとや」の長沼社長に出会い、ベリー類の育種研究をサポートしていただきました。加工品(お
菓子)の試作品を作っていただいて展示会等で反応を聞いたり、パティシエの方に果実の評価を伺ったり、ハスカップの改良を進める上で非常に勉強になりました。今年(2010 年)の4 月から長沼町に「きのとやファーム」が開園しました。私達の研究室で育成したハスカップも栽培されています。品種改良は時間のかかるものですが、長沼社長はハスカップの可能性にかけてくれているのだと思っています。寛大なご厚意によって共同研究が支えられていることを記し、それに報いるためにも日々精進しているところです。


 今回詳しくはご紹介できませんでしたが、花卉類についても研究対象にしています。主に遠縁交雑や育種に応用できる試験管内受精に関する基礎研究です。これらについても、今後、技術交流や共同研究を進めていきたいと思っていますので、お問い合わせいただければ幸いです。

生産現場でお待ちしています


 興味をもっていただいた方は、ぜひ圃場に足を運んでいただければ幸いです。7 月ぐらいがハスカップの収穫期です。その他、何かありましたらメール(hoshino@fsc.hokudai.ac.jp)等でご連絡いただければ嬉しく思います。
 また、ホームページや関連文献の情報を掲載いたしますので、適宜ご覧いただければと思います。

ホームページ・関連文献

研究グループのホームページ
http://noah.ees.hokudai.ac.jp/agroecosystem/hoshino/

北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP)からは、以下の関連文献をダウンロードすることが可能です。興味のある方はぜひご覧ください。
(1) ハスカップ(Lonicera caerulea L.) における系統選抜のための食味および形質調査
URI: http://hdl.handle.net/2115/13470
(2) Interspecific hybridization in Lonicera caerulea and Lonicera gracilipes: The occurrence of green/albino plants by reciprocal crossing
URI: http://hdl.handle.net/2115/43307
(3) 北大ブランドのハスカップ加工品を開発
URI: http://hdl.handle.net/2115/34960
(4) Plant regeneration with maintenance of the endosperm ploidy level by endosperm culture in Lonicera caerulea var. emphyllocalyx
URI: http://hdl.handle.net/2115/44168

星野准教授の最新のシーズ技術はこちらよりご覧いただけます(2016年研究シーズ集 vol.3掲載)

Update 2016-09-08
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