研究者紹介

【情報通信】 (2010/11/29公開)

◇金井 理 教授 大学院情報科学研究科システム情報科学専攻

運命的なCAD 技術との出会い


運命的なCAD 技術との出会い


 北大入学当時は、今で言う「大くくり入試」が実施されており、理系学生は2年生で農・理・工・薬・獣医という幅広い学部の中から進路を選択しなければなりませんでした。子供のころから機械いじりや電子工作、大工仕事が大好きだったせいか、工学部へ入り機械・電子・建築工学科のいずれかで勉強したいと漠然と考えていましたが、これら3学科はいずれも非常に人気が高く、残念ながらそれ以外の選択を余儀なくされました。そこで次善策として、機械と電子両方のカリキュラムが少しずつ学べる精密工学科を選択しました。実は後で知ったのですが、当時は丁度、コンピュータにより工業製品の3次元設計を行うComputer-Aided Design(CAD)技術の黎明期にあたっており、精密工学科ではこのCAD 分野の世界最先端の研究を行っていたのです。このテーマに出会えたのが幸運でした。卒業研究では、CAD 技術の重要な一部である3次元加工ソフトウエアの開発を実際に担当し、プログラミングのみならず、コンピュータ内部に記述されていた数学的なモデルが、工作機械を通じて実体として現れる技術の素晴らしさに感動し、この分野にずっと携わりたいという強い希望から研究の道を選択しました。

産業界のニーズに応える3 次元CAD 技術やシミュレーション技術の開発


 現在、我々の研究室では、CAD 技術の発展形である「デジタルエンジニアリング」のソフトウエア開発を行っています。デジタルエンジニアリングとは、製品設計に関わる様々なデジタル情報を表現し、これをモノ作りに有効活用する技術ですが、市販ソフトウエアでは解決できていない問題がまだ多数存在しており、これらを研究対象としています。具体的には、

  • メゾ・ミクロスケール現物融合型設計技術: X 線CT やレーザスキャナによる工業製品の3次元測定データからのCAD モデルの自動再構成技術、CAE 用モデルの生成技術、また膨大な3次元測定データの圧縮・単純化技術の開発

  • マクロスケール現物融合型設計技術: 中長距離レーザ計測で得られる市街地や地表面、屋内空間等の大規模環境測定データから、特定のオブジェクトを自動認識し、整形された3次元CAD モデルを自動生成する技術の開発

  • 人間モデル融合型設計技術: 人間の手の精巧な3次元モデルと製品CAD モデルを組み合わせた「持ちやすさ・操作容易性」の仮想評価、情報機器の筐体CAD モデルとユーザインタフェースソフトウエアのプロトタイプを統合できる情報機器3次元デジタルモックアップ構築環境と超短期間ユーザビリティ評価環境の開発


 最近、特に産業界からのニーズが高いのが、複雑で大規模な環境の3次元計測データから、エンジニアリングに活用できる整形3次元CAD モデルを再構築する技術です。これらは,特にプラントエンジニアリングや、大規模なビルや土木構造物の保守・運用の効率化のため需要が高まっています.本研究室では,これらを社会インフラの長期的かつ効率的な寿命管理にも結び付く重要な技術と位置付け、今後のデジタルエンジニアリングが目指すべき新しい応用分野として、重点的に実施してゆく計画をたてています。また現在、多くの情報機器メーカが課題とする製品の「脱コモディティ化」実現のための設計支援技術として、人間と物理的・認知的に親和性の高い製品かどうかを仮想的にかつ低コストで評価できるシミュレーション技術も、もう一つの柱として取り組んでいます。

技術を武器とした独立志向を期待する


 私が学生時代に所属していた研究室は、モノ作りをテーマとしていたため、当時から産業界とのつながりが強く、研究成果を特許申請することや、企業との共同研究をごく自然な形で進めていました。そのせいか、産学連携には違和感を持っていません。産業界に貢献できる研究成果は、論文発表すると同時に積極的に特許申請をするのも自然な流れと考えています。10 年ほど前,研究室の知財を生かしたデザイン向けCAD ソフトウエアの1モジュールを国内のベンダーで商品化しましたが、残念ながら市場で一定のシェアを取るまでには至りませんでした。原因はマーケッティング戦略にもあったと思いますが、もっと優れた技術を提供できていればと、今でも残念に思っています。最近は世界でCAD ソフトベンダの統合と寡占化が進み、ソフトを自力開発できる企業が少なくなり、国内のみでの産学連携は非常に難しいのが実状です。一方、韓国のCAD 関連の大学発ベンチャ企業の中には、世界的に認知されるプロダクトを提供している会社もあります。今の北大生は大企業志向で、技術を武器に独立しようというマインドを持っている者があまりいないのが気になりますが.その中で20 年前に指導した学生の一人は、ニッチ向けのCG ソフトのベンチャ企業を興し成功させています。狭い分野でも良いので、北大発の技術を搭載したデジタルエンジニアリングのソフトウエアが、世界市場である程度のシェアを持つようにしたいというのが、現在の夢です。

研究室の活動概要や発表論文

下記のWeb ページに掲載されていますので、ご興味があればご覧ください。
http://www.sdm.ssi.ist.hokudai.ac.jp/

研究シーズ

形状の対称性・規則性の自動認識システム
Update 2018-11-09
北海道大学 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局 北海道大学研究シーズ集Webサイト
EARTHonEDGE北海道 DEMOLA HOKKAIDO 創業デスク 北海道大学 産学連携メールマガジン