研究者紹介

【その他】 (2010/10/25公開)

◇飯澤 理一郎 教授 農学研究院

農業・農村の経済的諸問題研究のきっかけは、学園騒動


農業・農村の経済的諸問題研究のきっかけは、学園騒動


 私は山形県の片田舎の農村で育ちました。農村は「農業基本法」の下、一部に明るさが見えて来ていましたが、まだ多くの問題を抱えていました。貧しさや出稼ぎ、一層の兼業化の進行などは、その典型的な現れと言えます。当初、実験系に進み、農業技術の開発をなどと意気込んでいましたが、ちょうど学園の騒擾時と重なったこともあり、社会・経済問題に次第に関心が移りました。その後、農業経済の大学院に進み、農業・農村の経済的諸問題の研究に打ち込みました。年を追う毎に研究者としての関心は深まるばかりで、気がついて見ると定年まであと1 年を残すのみとなっていたと言う次第です。

「6次産業化」への発展の法則を捉える


 一部の自給的農家を除き、現代の農業は商品生産農業です。特に、大規模な北海道農業はその傾向が強く、如何に有利に農畜産物を販売するかは農家の命運を左右する極めて重要な事項と言えます。有利に販売すると言っても、農畜産物市場の有り様、それぞれの農畜産物の市場の有り様が解らないでは打つ手がありません。私はこれまで、こうした農畜産物市場の有り様=構造を検討してきました。若手の頃には、特に北海道農業にとって重要と思われる甜菜、生乳、小麦、馬鈴薯などの加工用農畜産物市場を対象に、加工会社(日本甜菜製糖や雪印・明治・森永乳業、日清・日本製粉など)の動向を中心に、農畜産物市場(原料農産物市場)と製品市場を統一的に理解すべく、様々に検討を加えてきました。もちろん、農畜産物市場は極めて政策的関与が著しいことから、農業政策、特に農畜産物市場政策や国境政策(輸出入に関する政策)の展開過程の特徴やその性格の検討も、その重要な一環として行ってきたことは言うまでもありません。
 周知のようにWTO 発足後、輸入物に押されて国産農畜産物の苦戦が続いています。こうした中で、国産農畜産物が反転、攻勢に転じる道はあるのか。そこで注目しているのが農家・JA などの直売所やいわゆる農業の「6 次産業化」です。それは付加価値を農業に取り戻すだけでなく、消費側との交流を通じて輸入攻勢に対する「防波堤」となって行く可能性を持っているからです。しかし、直売所も「6 次産業化」も闇雲に取り組めば良いと言うものではありません。そこには発展法則があり、まずそれをしっかり押さえる必要があると思います。そうした問題への関心から、現在、如上のことに関する実態調査と分析、発展法則の解明などに取り組んでいるところです。「食料の世紀」と言われ、世界的な食料不足が心配されている中で、日本から農業を無くすわけには行きません。農業とともに歩む(商工業などももちろん必要です)日本の構築、農業経済学徒としての私の大いなる期待です。

「産学連携・社会貢献」があって存在意義がある


 農学は実学であり、当然、その一構成要素たる農業経済学も実学です。実学は社会に貢献してこそ意味があるのではないでしょうか。もっとも理学などの基礎科学も、そのベースとして社会に貢献していることは言うまでもありません。ただし、その社会貢献は研究結果を公開しつつ幅広い方々と議論を交わすこと(地域の方々と恒常的な研究会などを組織することも含まれます)や地域の方々とある地域を対象に、あるいはある課題を巡り共同研究を行うことが中心になると思います。
 事実、私も地域の方々との研究会を運営し、また、道内何カ所かで地域の方々との、地域農業の発展方向を巡っての共同研究を行い、大いなる刺激を受けた経験を持っています。「社会貢献」などと大上段に構える必要はなく、まさに如上のような当たり前のことが社会貢献に繋がるし、研究推進にも繋がるのではないかと考えています。また、産学連携も同じです。そもそも実学とは「産学連携」があってこそ成り立つのではないでしょうか。また、「官」との連係も必要で、「産官学連携」をますます推し進めて行くべきであると考えています。

全国の農学部で、初めて「市場学」を標榜


私の属する研究室は「食料農業市場学」と言い、全国の農学部の中で「市場学」と称した最初の研究室で昭和42 年に誕生しました。現在の教員は教授1、准教授1 の2 名体制で、修士課程10 名、博士後期課程7 名、博士研究員2 名、研究生1 名の大学院在籍者を抱えています。
 市場学と称しているように、様々な農業食料問題を市場論的視角からの解明を進めています。例えば、卸売市場の機能や構造、食品工業や量販店、外食産業の経済構造の解明、あるいは農家直売所やCSAの実態や機能の解明などを目指して研究を進めています。また、労働力市場や肥料・農薬などの生産財市場などの解明も進めています。更に、中国やモンゴル、ベトナムなど諸外国の市場問題の研究も進めています。

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