◆快適な住まいづくりのために -パッシブ換気システム-

【その他】 (2009/11/25公開)
大学院 工学研究科
繪内 正道 特任教授
~自然対流式床下暖房換気システム(パッシブ換気システム)~

 「自然対流式床下暖房換気システム」は、北海道大学大学院工学研究科繪内正道教授、北海道立北方建築総合研究所福島氏、拓建築設計事務所との産学官連携によって開発された新しい北方型住宅システムです。(特許第4392508 号)

 本システムは、寒冷地における冬期間の内外温度差による浮力を利用する換気方式で、断熱気密機能を高く保った建物の床下空間へ集中的な自然給気を行います。住宅全体の負荷に応じた暖房器を床下に設置してその冷外気を予熱し、暖めた空気を自然循環させることで全室の暖房と換気を同時に行う、北海道が生んだ世界に誇れる画期的な暖房換気システムです。

システムの概要


■室内換気は機械換気システムが主流だが、冬期間は外気を取入れることによって冷風感
を感じたり、フィルターの目詰まりが住環境を損なう原因となっていた。
■一方、このシステムは、外気の新鮮な空気を床下に集中的に取込み、床下に配置された暖房器で暖められた空気が開口部を通して上昇。室内をくまなく対流することによって温度むらのない快適な、住空間が実現する。
■さらに、リターン流量を制御することによって換気量を損なうことなくオバーヒートを防ぎ、まさに建物自身が機械動力を頼らずに暖房調整と換気を同時おこなう画期的なシステム。
■建物全体にゆっくりとした暖気循環が起こり、寒冷地特有の結露やカビが発生しない健康な住宅になるのはもちろんのこと、一定以上の断熱気密性能を有することで変わることのない温熱・換気性能を得ることを可能とした。

システムの特徴


■常時自然換気と暖気循環により、温度ムラのない開放感あふれる快適空間が実現できる
■基礎断熱した床下空間に集中給気することで冷外気の処理が容易になる。冷風感がない
■床表面温度や壁面温度が相応に高くなり、穏やかな暖房環境を実現
■室内に暖房器を設置しなくともよいので、室内空間の有効利用が図れる
■自然の空気循環を利用するため、熱搬送の動力が不要となる
■暖房器の設置台数を削減でき、イニシャル及びランニングコストの削減が可能となる
■設備及び配管が床下にあることから、保守点検が容易であり、将来熱源の変更にも有利

よくある質問


Q1 )昔から屋根に排気塔をつけた自然換気の建物がありますが、それとこのパッシブ換気システムはどこがちがうのですか?

パッシブ換気の原理は、内外の温度差による空気の浮力を利用した換気方式で、昔から生活の知恵として利用されてきた基本的な技術です。しかし、それらは隙間や壁面開口からの自然給気の組合せで成り立っています。これに対し、パッシブ換気システム(自然対流式換気システム)は高い気密性を前提とし、基礎断熱を十分施した床下へ集中して自然給気をおこないます。そして、予熱した暖気を居住空間へ自然に送ることで、寒冷地における外気導入のデメリットを解消し、機械換気に頼ることなく常時換気が実現します。

Q2 )湿度の高い床下からの空気が循環して問題ありませんか?また、床下には防腐処理した土台がありますが。

床下は、基礎断熱をすることで居住空間と同じ温熱環境になります。そして、冬期は常に乾燥した外気が導入されるため乾燥状態となり、湿気によるカビ菌などの発生とは無縁の空間になります。実際、この換気システムを導入した家では、冬期間床下が洗濯物乾燥スペースとして有効に活用されています。また、当然のことながら、土台には有害な防腐処理剤を塗布する必要がありません。ただし、年に一度は床下空間を点検清掃することが重要です。

Q3 )自然の動力で換気するとのことですが、換気量は問題ないのですか?

パッシブ換気では、換気量の変動がシステム設計に大きな影響を持ちます。温度差による換気動力は安定して得られますが、外部風による換気動力は不安定です。しかし、住宅においては固定的に連続して行われる換気の必要性は必ずしも高くありません。1 日の変動の中で住宅全体の空気が穏やかに換気されることが大切で、換気不足が深刻な影響を及ぼすことはほとんどありません。このシステムでは、冬期の平均外気温を基に約2000 立法メートル/day を設計換気量としますので、約80 立法メートル/h となり必要換気量を一人30 立法メートル/h とすれば問題ない換気量といえます。

Q4 )床下暖房って、読別な暖房器を使うのですか?
また、床下の温度が高くなって問題ありませんか?

設置する熱源または放熱器は特別に指定されたものはありません。また、輻射型・対流型の指定もありません。現在のところ、セントラル方式による床下専用の放熱器や電気蓄熱式暖房器(蓄暖)が出ております。また、常時暖気が循環しますので床下だけ極端に温度が高くなることはありません。

Q5 )床下に全部の暖房器を設置するメリットってなんですか?

自然対流式換気システムは、基礎断熱床下空間に集中的に外気を導入することで、外冷気の処理が容易になり快適な室内環境を実現できます。その他のメリットとして、以下のような事柄が挙げられます。
●床表面温度や壁表面温度が相応に高くなり、穏やかな暖房環境が得られる。
●室内に暖房器を設置しなくてもよいので、室内空間の有効利用が図れる。
●自然の空気循環を利用するので、動力が不要となる。
●暖房器設置台数が削減できる。

Q6 )他のパッシブシステムとどこが違うのですか?

パッシブ系システムにはそれぞれ特徴があり、その地域の気候風土にあわせて展開されています。
①エアサイクル系システム:
空気が循環する点では似ていますが、壁の中を循環するシステムで、暖房や室内換気は補助的なものです。断熱気密工法の前提に立っていないので、北海道では採用が難しいと思われます。
②OM ソーラーシステム:
軒先から入った新鮮空気を屋根面で暖め、床下へ機械送風し、そこから室内へ熱搬送を行うシステム。床下からの暖気上昇という点では似ていますが、暖気の循環がないことと夜や悪天候の日の室内換気が曖昧です。暖房は補助的使用となっています。

 その他、パッシブソーラーシステムなどたくさんありますが、この自然対流式換気システムは寒冷地北海道で生まれたシステムであり、高断熱高気密であるからこそ成立する全室暖房と換気を
同時に行う素晴らしいシステムであると言えます。
Update 2016-12-09
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