研究者紹介

【環境】 (2010/06/25公開)

◇鈴木 恵二 教授、川村 秀憲 准教授 大学院情報科学研究科 調和系工学研究室

情報技術の力をもってより良い世界の創出に貢献する

IT 技術と人間社会の調和を目指して


 現在の社会では、我々は様々なIT 機器に囲まれて生活している。また、そのIT 機器を用いたサービスの進展は、日進月歩ではなく秒進分歩である。しかし、その進展の方向は我々
の求めているものなのか。また、「ディジタル・ディバイド」という言葉が端的に示すように、偏った進み方になってはいないのか。
 このような問いかけに対して、IT 技術と人間社会が調和した実社会サービスの実現と、将来に渡ってそのサービスを提供するためのシステムデザインを目指しているのが北海道大学大学院情報科学研究科調和系工学研究室だ。

「実社会サービス」と「システムデザイン」


 このようなIT 技術と人間社会の調和を目指すには、二つのアプローチが必要である。一つは現時点でのIT 科学技術レベルと動向から、どのような社会サービスが可能かを将来に渡って考えること。もう一つは、現在の社会ニーズを分析し、将来の社会ニーズを予測し、長期ビジョンに基づくシステムをデザインすることである。

 例えば、誰もが持っている携帯電話。携帯電話には既に多くの機能が組み込まれている。GPS もその一つだ。しかし、GPS が搭載され、位置情報を記録・送信することができても、自分が移動した記録を残すだけの使い方では宝の持ち腐れである。このままでは、現在の調和系工学研究室のメンバー中央ネクタイ姿が鈴木教授、左隣が川村准教授。IT 技術が実現可能なことを、可能な範囲で携帯電話に実装したに過ぎなくなってしまう。では、位置情報を何に使うべきなのだろうか。

 一方で、人の移動記録情報を切実に必要としている産業がある。例えば、観光産業である。観光産業ではまず人が移動する。移動した先で観光名所を訪ね、そこでサービスを受け、様々な体験をする。あるいは宿泊をしたり、土産や記念品を買うかもしれない。しかし、環境客の満足度も含め、市場調査を行うのは非常に困難である。できるとしても、現時点では「一年間の観光客の総数」や「観光地の総売上」というようにマスの統計に限られて
いる。同じ三次産業でも、POS などのシステムを駆使し、緻密なマーケティングをしている小売業とは雲泥の差である。ところが、これを観光産業の努力不足としてしまうのは酷である。なぜならば、これを実現するには位置情報を記録・管理するインフラが必要で、観光産業のみでは対応仕切れないからだ。

 しかし、位置情報を求めているのは観光産業だけではない。ナビゲーションのサービスは勿論だが、少子高齢化社会が進む中、位置情報は「安全・安心産業」にも利用できるだろう。また、観光産業においても、訪問した先々で必要な情報が携帯端末から引き出せるとすれば利用者にとってのメリットも大きい。過去の行動・購買履歴から、自分が本当に求めているモノやサービスを推薦してくれるのであれば、ホテルのコンシェルジェよりも頼
りになるからだ。もし、ここまで位置情報の記録・管理の用途が広がるのならば、社会インフラとしての整備も不可能ではないだろう。

 ところが、そこに至るまでには他の課題が出てくる。例えば、位置情報の精度である。全ての携帯電話にGPS が搭載されるようになるとは限らない。携帯電話のアンテナから位置情報を推測することしかできない状況も考えられる。また、位置情報とモノ・サービスの購買情報とを照合させる必要も生じるだろう。いずれの情報量も莫大な上に、利用者は瞬時に結果を求める。このため、このサービスを実装するには高度な情報検索技術が必要と
なる。また、観光産業のニーズだけを反映しては他の社会ニーズに応えられなくなる可能性もあるし、逆もまた然りである。このため、社会全体での最適化を図らなくてはならない。

 このように、IT 技術と人間社会の調和を目指すには、IT 技術で可能なこと、社会のニーズ、克服すべき課題を、現時点から将来に渡って俯瞰し、システムをデザインする必要があるのである。

産学連携に向けて


 先に上げたGPS と観光産業は、例の一つに過ぎない。調和系工学研究室では、複雑系、マルチエージェント技術、適応技術、人工知能、データマイニング、ゲーム理論、オペレーションズリサーチといった技術および学術基盤の上で、研究室に閉じることなく研究を進めている。研究を進めるためには、実際のデータやフィールド、実機(プロトタイプを含む)が必要となることから、企業や研究所との技術連携・共同研究なども積極的に進めて
いる。
 また、学生の教育・指導の一環として、自分たちが作り上げたIT 技術を使った社会サービスのシステム(情報・広告の配信メルマガ「びも~る」)を運営するベンチャー企業・株式会社調和技研を立ち上げている。

参考

http://harmo.complex.eng.hokudai.ac.jp/modules/tinyd0/index.php?id=80

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