◆「がんワクチンの効果を増強するRNAアジュバント」

【ライフサイエンス】 (2013/05/23公開)
大学院医学研究科 免疫学分野
瀬谷 司 教授、松本 美佐子 准教授


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がんペプチド免疫療法に必要な免疫増強物質 アジュバント


 抗がん免疫療法は外科手術、放射線、化学療法を補完する、期待のがん治療法です。抗がん免疫療法の一つであるがんペプチドワクチン療法は、がん細胞に特異的なペプチド抗原により活性化された免疫担当細胞ががん細胞を選択的に殺傷することを利用した治療法です。ワクチンとしてがんペプチドを単独で用いた場合は効果が不十分なことが多く、免疫を増強する活性を持つアジュバントという物質との併用で臨床開発が進められています。
 このアジュバントとして近年注目されているのが、自然免疫を司るTLR(Toll-like Receptor)という受容体に結合する物質(リガンド)です。RNAアジュバントの一種のpolyI:Cは以前から高いがん治療効果が知られていたものの、その強い副作用からヒトへの応用は困難でした。

副作用を克服した新規の核酸アジュバントを確立


 瀬谷教授、松本准教授らの研究グループは、RNAアジュバントによる抗がん免疫作用の増強には、樹状細胞のTLR3-TICAM-1という経路を選択的に活性化させることが重要であることを見出しました。polyI:CはTLR3-TICAM-1経路のほかにIPS-1経路も活性化させるためにサイトカイン血症やショックを誘発し、副作用を起こすと考えられます。
 研究グループはこのコンセプトに基づいて、TLR3-TICAM-1経路のみを活性化させるRNAアジュバントのデザインと探索を続け、新規の核酸構造体(dsRNAX)の確立に成功しました。dsRNAXはTLR3への移行能力とTLR3に結合してTICAM-1を活性化させる能力の両方を備えたキメラ分子です。この分子を担がんマウスに投与するとpolyI:Cに劣らない抗がん効果を示しました(下図)。また副作用である血中の炎症性サイトカインの量はpolyI:C投与では増加しましたが、dsRNAXでは低レベルに留まりました。
 dsRNAXはTLR3の選択的活性化というコンセプトを実現するものであり、抗がん免疫療法のブレイクスルーとなることが期待されます。

アジュバントとしてワクチン全般に利用可能


 本技術はがんワクチンや感染症ワクチンの効果を増強するアジュバントとして利用できます。今後、臨床応用に向けて、製造方法のさらなる検討や、安全性試験などの非臨床試験を進めていく予定です。
 共同研究やライセンスにご興味をお持ちの皆様からのコンタクトをお待ちしております。

研究室ホームページ

http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~e20536/

特許出願情報

「アジュバント活性を有する新規核酸およびその利用」
国際公開番号: WO2012/014945
出願人   : 国立大学法人北海道大学
発明者   : 瀬谷司、松本美佐子
現在、日本・アメリカ・ヨーロッパ・中国の4ヶ国に出願中

用語の説明

アジュバンド
アジュバントとは抗原性補強剤とも呼ばれ、抗原と一緒に注射され、その抗原性を増強するために用いられる物質であります。
Update 2016-12-14
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
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