シーズ技術紹介

【その他】 (2013/06/20公開)

◆「水蒸気・水混相噴流を用いた超低環境負荷洗浄 -薬品無しの革新的洗浄法-」

大学院工学研究院機械宇宙工学部門
渡部 正夫 教授

渡部教授の本技術の最新情報はこちらよりご覧いただけます(2016年研究シーズ集 vol.3掲載)

新しい革新的洗浄法である“水蒸気・水混相噴流を用いた超低環境負荷洗浄”


 洗浄はものづくり基盤技術に指定され、産業において欠かすことのできない重要なプロセスです。例えば、半導体デバイス製造プロセスの3割程度を洗浄が占めると言われていますが、地球規模の環境問題や、危険な洗浄剤による労働環境問題のため、洗浄剤の削減や安全な洗浄方法が求められています。そのため様々な規制が導入され、洗浄剤の使用が困難になっています。さらに今後この傾向は続くことが予想され、消防法やPRTR法の影響もあり、産業界では洗浄法の抜本的な改善が求められています。
 渡部教授、小林准教授のグループでは、静岡大学とアクアサイエンス株式会社と共同で、水蒸気と水のみの混相噴流を用いる全く新しい革新的洗浄法を提案しました。流体力学を応用して、高速液滴衝突力、蒸気の凝縮効果等の物理的作用を有効に利用することが可能となったため、化学薬品を用いずに、本洗浄法は低圧力で高効率な洗浄効果を実現することができるようになりました。

水蒸気/水液滴の一成分二相流体における液滴衝突に及ぼす凝縮効果の寄与


 本洗浄装置は、清浄な水蒸気と常温の水とを混合し、超音速ノズル内で加速させ、被洗浄物へ噴射することで洗浄を行うものです(図1)。蒸気タンク内の圧力はゲージで0.5 MPa程度、ノズル入り口部でも0.1から0.2 MPa程度と低圧であるのが特徴です。加圧窒素により常温の超純水をノズル内に圧送することで水蒸気と水とを混合します。通常、洗浄対象物との距離は10 mm程度です。本洗浄手法は、純水と水蒸気のみの環境に低負荷な作動流体を用いた単純な構造でできる洗浄装置であるため、特許庁の産業用洗浄技術で分類できない全く新しい洗浄技術と考えられ,その新規性は非常に高いものです。
 この混相噴流洗浄法の洗浄基本原理については不明な点が残っています。研究グループでは、液滴が固体表面衝突後に形成される表面に沿う液膜流れに着目し、「液膜は周囲気体を押しのけて伸展するため、液膜先端では不安定性のため乱れスプラッシュが形成されるが、周囲気体が凝縮する場合には、不安定性が抑制されるため薄液膜が高速で固体表面上を伸展し、その結果、より強力なせん断力が発生し洗浄効果が発生した」(図2)と考えています。水蒸気/水液滴の一成分二相流体における液滴衝突に及ぼす凝縮効果の寄与については、これまでに全く報告が無く、基礎研究としても、非常に新規性・独創性の高いものです。


図2 仮説:液膜伸展に及ぼす凝縮効果

本洗浄手法の高い洗浄性能


 次に本洗浄法の利用例について紹介します。ウェハ表面の微粒子除去率の調査結果を示します。本洗浄手法を用いると、粒子径が130 nm以上の場合いずれも95%以上の高い粒子除去性能(PRE)を示します(図3)。一方,100 nm程度の粒子では60%程度の除去率となるのですが、この100 nmスケールの粒子に対しては洗浄時間を増加させることでPREが増加するため(図4),最適洗浄条件を選ぶことにより、より細かな微粒子除去も可能です。
 リソグラフィにおいて使用されるフォトレジストは,エッチング後取り除く必要がありますが、本手法はそのレジスト除去にも応用できます(図5)。また,ドライエッチ後のレジストおよびポリマーの同時除去も可能です(図6)。水蒸気・水の混相噴流洗浄法が,空気・水混相噴流に比較して,特異的に高い洗浄性能を発揮することがわかります。
 これからは、極低環境負荷である本洗浄法の特徴を活かして、食品・医療の分野に応用を広げていくことを検討しています。

その他 関連情報

(1) 対象物洗浄方法及び対象物洗浄システム, 特許第4413266号、林田充司、渡部正夫、真田俊之、城田農 (2008).
(2) T. Sanada, M. Watanabe, M. Shirota, M. Yamase and T. Saito : Impact of High-speed steam-droplet spray on solid surface, Fluid Dynamics Research, 40, 627-638 (2008).
(3) 真田俊之、齋藤隆之、林田充司、斉藤輝夫、山瀬雅男、渡部正夫、蒸気と水の混合噴流による洗浄技術の開発、噴流工学, vol. 24-3, 4-10 (2007)

研究室ホームページ

http://mech-me.eng.hokudai.ac.jp/~info/index.html
Update 2016-09-15
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.3
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