研究者紹介

【情報通信】 (2013/06/21公開)

◇小笠原 克彦 教授 大学院保健科学研究院 社会医療情報学研究室

深める研究者ではなく広げる研究者として幅広く展開

深める研究者ではなく広げる研究者


 今回紹介する小笠原先生は、ちょっと変わった経歴をお持ちの先生です。放射線技師としてご活躍されていた小笠原先生は、ある日その仕事を発展させるために、室蘭工業大学で情報工学の勉強を開始します。本業の傍ら室蘭まで4年間通い、情報工学で学士号を取得。その後は慶応大学を経て、北大に戻り遠隔医療の経済性に関する研究で医学博士を取得。保健科学研究院の前身である医療技術短期大学部が改組されるタイミングで、母校から声がけされて、研究教育活動をスタートさせます。
 「私は深める研究者ではなく、広げる研究者」
 その言葉の通り、小笠原先生の活躍は当初の放射線技術学に留まらず、情報工学、医療情報学へとどんどん広がっていきます。
 そんな小笠原先生が北大に着任後、新たに得た学問が経営学でした。これも本業の傍ら小樽商科大学に通い、経営学修士(MBA)を取得。きっかけは病院の経営情報でした。医療情報の一つとして病院経営の数字に触れるうちに、「医療の現場を知った病院経営者も育成したい」という思いから、自身、経営学の勉強を始めたとのこと。
 今の小笠原先生の研究は、文系理系に限定されない様々な知識や経験をベースに、地域社会との連携を重視しながら、幅広く展開されています。

研究の3本柱


 小笠原先生は現在、大きく分けて3つのテーマで研究を進めています。
 一つ目は遠隔医療の保健版に関する研究です。遠隔医療と聞くと病気になった患者さんがテレビ電話で医師の診察を受ける・・・という構図などをイメージしますが、小笠原先生は“病気になる前”の方を対象に、保健師から遠く離れていても健康状態を監視し変化があればすぐに対処できるような“遠隔保健”の研究を行っています。実証研究は岩見沢市のような地方自治体やツルハ薬局のような民間企業の協力を得て、「産学官連携」の体制で行われています。一方で、遠隔医療・保健の課題はその経済性。赤字続きで税金頼みになるようでは長く続きません。小笠原先生は経営学の知識などを活用し、情報工学のみならず医療経営の観点からも遠隔保健のコンセプト実証をしています。将来は介護分野でも試してみたいと、夢は広がります。
 二つ目は医療技術やシステムの経済性分析です。わかりやすい事例はドクターヘリの費用効果分析で、アンケート調査などを行い、例えばどのような患者を対象にすれば費用対効果が高いかなどの分析を行っています。「人命第一」を免罪符に、他業種と比べて費用対効果があまり話題にされない医療分野ですが、小笠原先生のグループはここに鋭く切り込んでいます。
 三つ目は医療機関に蓄積された情報の言語処理による分析です。医療の現場では患者さんのカルテやインシデント(ひやりとした経験)レポートなど、日々様々な言語情報が蓄積されています。このような言語情報をコンピューターで情報処理しやすいように加工し、分析することで医療現場の課題点を抽出し医療技術等の向上を目指す試みです。

社会との接点が多い保健科学


 大学の理系研究者と聞きますと、多くの場合、研究室に籠もった生活を送っている姿を想像します。しかし保健科学の分野、特に小笠原先生の研究分野では社会との接点が非常に多いと聞きます。潜在している将来社会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿、暮らしの在り方を議論し、それに必要な技術、知識を結集する「バックキャスト」の手法が現在、産学連携の分野で注目されていますが、小笠原先生はまさにこの「バックキャスト」の手法をいち早く導入しているとも言えます。

大学、そして小笠原先生の役割


 「大学は先端性が強み」
 「最先端の医療・保健の技術、知識を一般に広めていき、ソーシャルイノベーションを起こしたい」
将来を見越した上での大学、そして小笠原先生の役割について、小笠原先生は上記のように考えています。例えば小笠原先生の研究テーマの一つである遠隔保健。今後、人口減が急速に進む日本そして海外先進国において益々重要となる研究分野です。この実証研究を、とりわけ過疎化が急速に進む北海道というフィールドを使って、かつ北大という最先端研究の拠点で行うことができるのは、小笠原先生のこれまでの蓄積そして現在のお立場があってのことで、他の研究者が容易に真似できるものではありません。小笠原先生の今後の益々のご活躍が期待されます。

その他

研究室ホームページ
http://smi.hs.hokudai.ac.jp/
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