シーズ技術紹介

【ライフサイエンス】 (2013/07/18公開)

◆「血糖値をコントロールするための新しい食素材」

大学院農学研究院
比良 徹 講師

比良講師の最新のシーズ技術はこちらよりご覧いただけます(2016年研究シーズ集 vol.3掲載)

負担の少ない血糖値コントロールを目指して


 先進国を中心に古くから糖尿病が問題となっています。そして、日本を筆頭に少子高齢化を迎える国では今後も患者は増加することが予想されています。さらに、最近では中国やインドなどの新興国、及び中東諸国でも糖尿病患者が増えています。理由としては、経済発展に伴いライフスタイルが変化していることが挙げられています。
 糖尿病の予防には適度な運動やバランスのよい食事、即ち「健康的な生活」が基本ですが、贅沢を覚えてしまった人類は健康的な生活に戻すことがなかなかできません。また、ひとたび糖尿病にかかってしまいますと、生活改善と共に毎日の血糖値コントロールが必要となりますが、継続的な血糖値降下薬の服用やインシュリン注射は患者にとって経済的、肉体的に大きな負担となります。
 そこで、生活をあまり変えず、かつ無理なく血糖値をコントロールする方法として、耐糖能(グルコースを処理し血糖値を正常に保つ生体機能)を改善、強化する作用を持つ食素材をサプリメントや機能性食品として(必要があれば医薬品と併用して)摂取する方法などが考えられています。

トウモロコシに秘められた力 ~トウモロコシペプチドの新効果発見~


 トウモロコシはデンプンを主成分とする野菜(穀物類)で、そのまま食用とする他に、コーンスターチの原料としても利用されています。コーンスターチを製造した後の残渣にはタンパク質などが含まれますが、このタンパク質の一種、ゼイン(Zein)はそのままでは水に溶けにくい性質を持ち、プラスチックのように皮膜を作る性質を持っています。
 今回、比良先生のグループはこのゼインを部分的に加水分解し、得られた水溶性の小さなタンパク質断片(ペプチド)の効果を実験用ラットに食べさせて調べたところ、このペプチドがマウスの腸まで届き、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を強力に分泌する効果を示すことを見いだしました。GLP-1は膵臓からのインスリン分泌を促進し、ひいては血糖値の低下を導くことが知られている、消化管ホルモンの一種です。
 更にこのペプチドは、GLP-1を分解する酵素(DPP-IV)の働きを抑える効果もあることが判明し、GLP-1分泌促進と併せて二重の効果を持っていることが明らかとなりました。これらの効果はいずれも耐糖能の改善、強化につながるものと期待されます。

今後の期待


 今回新たに見出されたペプチドは、従来廃棄されていたコーンスターチ製造残渣から得られるものであるため、工業的に安価かつ簡便に大量生産できる期待があります。また、このペプチドが持つ効果は今後の糖尿病予防・治療に大きな貢献をもたらす可能性があります。このような未利用資源の高付加価値化は、資源に乏しい日本にとってこれからますます重要となる技術であり、今後の発展が期待されます。

その他 関連情報


 本技術シーズは、2013年8月29~30日に東京ビックサイトで開催される「イノベーションジャパン2013 ~大学見本市&ビジネスマッチング~」(http://www.innovation-japan2013.jp/)にて比良先生がポスター発表される予定です。イベント参加費は無料ですので、ご興味をお持ちの方はこの機会に是非とも足をお運びください。


研究室情報

研究室ホームページ
http://www.agr.hokudai.ac.jp/shokuei/
Update 2016-09-08
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.3
食科学プラットフォーム イノベーション・マネージャー育成ユニット 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧