研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2013/11/21公開)

◇宮治 裕史 講師 北海道大学病院 保存系歯科 歯周・歯内療法科

新しい足場材料の検討

患者さんの診察を足がかりに臨床研究の道へ


宮治先生は東北大学歯学部をご卒業後、北海道大学大学院歯学研究科に移り、そこで博士号を取得されました。その後は北海道大学病院で歯科医師として患者さんの治療に携わる傍ら、歯周組織再生などに関する研究にも精力的に取り組まれています。

研究者になったきっかけは、臨床系の教室に所属し実際に患者さんを診察していく中で様々な疑問が生まれてきたことでした。
例えば歯周病治療の時に患者さんによって治るスピードや治り方が全然違うといった現象を目の当たりにし、患者さんの細胞には能力の違いや歯周病菌に対する反応の違いがあると予想しました。

そのような疑問が現在の研究テーマの元になっています。そして、臨床に結びつく研究をいつも考えて「臨床応用」という最終目標が常にベースにあるのが、現在のご研究の特徴です。

新しい足場材料の検討


歯周病は15歳以上の3人に1人がかかると言われている身近な病気。患者数に換算すると日本国内だけで3000万人以上の患者がいることになります。歯周病の怖いところは、歯周病にかかって歯の周り(歯肉や骨などの歯周組織)が破壊されてしまうと通常はそれを元に戻すことができず、しまいには歯が抜け落ちてしまうこと。

従って、まず歯周病を予防すること、そして歯周病にかかってしまったらその進行を防ぐことがとても重要になります。ちなみに、iPS細胞の登場で一躍有名となった再生医療について最近はめざましい進歩が見られ、破壊された歯周組織についてもそれを再生する試みがなされています。

このように現在は様々な歯周病予防、治療方法が検討、実施されている一方で、口の中は一般人が想像する以上に雑多な環境でありそれが病気の予防、治療を難しくしていると言われています。
即ち、日常的に飲食物が取り込まれ、それを狙う多種多様な口内菌が何億匹、何兆匹というオーダーで存在し、さらに唾液などの分泌液が昼夜めぐっているような雑多な口内環境にあって、歯周病の予防、進行阻止、再生といった医療処置を効果的に行うには、抗菌薬や生体活性材料が口内で分解、分散しないように、それらを歯周組織などに長時間留めておく手段が必要となります。

その手段として、現在は様々な「足場材料」を口内に設置し、そこに薬剤を留めておいたり細胞を誘引する方法が検討されています。宮治先生はこの足場材料の臨床応用を得意とする研究者で、β-TCP(リン酸三カルシウム)、ハイドロキシアパタイト、コラーゲンなど古くから知られている安心、安全な材料の新規活用のみならず、グラフェン、カーボンナノチューブといった最先端素材についても積極的に取り入れ、様々な研究成果を上げています。

具体的な一例を挙げますと、ナノサイズという極めて小さいサイズの再生物質を足場材料に組み込んで、骨や歯肉の再生を行うという研究を現在行っています。大きさについてピンと来ないかもしれませんが、例えば100ナノメートル前後の物質ですとこれは1ミリメートルの1万分の1の大きさとなり、細胞よりはるかに小さい物質となります。

あまりに小さいため、以前は取り扱いが非常に難しかったのですが、近年の技術発展で医療材料に利用できる可能性が見えてきました。現在はこの再生物質を足場材料表面にコーティングし、そこに細胞を誘引することを行っています。
このようにして細胞を足場に引き寄せますと、引き寄せられた細胞の活性が飛躍的にあがることを発見し、結果、歯周病の再生実験において骨や歯肉の再生に成功しました。

この成果は世界に先駆けた大変すばらしい成果ですが、ナノ物質には他にも薬の輸送性や抗菌性を持つなど様々な可能性を秘めており、さらなる成果を求めて日々探求を続けています。

医工産学連携の積極的な推進に取り組む


宮治先生はこれまで再生医療に向けたバイオマテリアル開発を北大他部署、大阪大学、関西大学、九州大学との医工連携にて行ってきました。そして、企業とも医工連携、共同研究を遂行してきた実績があります。

例えば、とある企業とは平成19年から共同研究を開始して、骨補填用バイオマテリアルを作製するとともに、研究者間のミーティングによって医学的データを企業へフィードバックするように心がけ、結果、国際学会発表、国内学会発表、論文および特許取得等の実績をあげました。

バイオマテリアル研究には理工学的技術と医学的技術の両立が必要ですが、民間企業にその両方を推進できるところは少ないことから、医工産学連携においては大学研究者にも「医」と「工」を結びつけるマネージ力が求められると宮治先生は考えています。

共同研究について

宮治先生の研究室では随時、共同研究企業を募集しています。ご興味をお持ちの方は弊機構、北海道大学産学・地域協働推進機構ワンストップ窓口、または宮治先生の研究室まで気軽にお問い合わせください。

宮治講師の最新のシーズ技術はこちらよりご覧いただけます(2016年研究シーズ集 vol.3掲載)

Update 2016-11-17
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局