◆「押して、引っ張って、虹色に輝くゲル」

【ナノテクノロジー・材料】 (2013/12/24公開)
大学院 先端生命科学研究院 ソフト&ウェットマター研究室
グン・チェンピン教授、黒川孝幸准教授、中島祐助教、野々山貴行特任助教

七色に光る「ゲル」


 みなさんは「ゲル」という言葉から何を思い浮かぶでしょうか。バイオ系の研究者でしたら、「ポリアクリルアミドゲル」や「アガロースゲル」には実験で何度もお世話になっていると思います。アラフォー世代でしたら、子供の頃に「スライム」というおもちゃがありました。お肌を気にする方には、「コラーゲンゲル」あたりがピンとくるでしょうか。
 このように、「ゲル(粘性個体)」という素材は日々の生活の様々なところで使われており、また生体の構成成分としても大変重要な素材であります。
 この「ゲル」ですが、特に着色しなければ、通常は無色透明のものを想像すると思います。これは日常見られるゲルが「高分子ハイドロゲル:高分子鎖のネットワークで多量の水分を抱え込んだ構造のゲル」で、水も高分子鎖もそれ自体に色がないため(難しい言葉を使えば、可視光成分を全透過するため)です。
 しかし、ハイドロゲルの構成分子や作り方をちょっと工夫することで、ゲルを七色に光らせることが可能になります。このようなゲルは、北海道大学大学院 先端生命科学研究院のソフト&ウェットマター研究室から生まれました。

七色に光るゲルの開発


 ではどのようにゲルを七色に光らせるのか?
その説明の前に、七色に光っているコガネムシや孔雀の羽の構造と、それが七色に光る理由についておさらいしてみましょう。
 コガネムシも孔雀の羽も、七色に光る部分を顕微鏡で拡大すると、周期的な微細構造が見えてきます。その構造部分自体に七色はついていないのですが、ここに光が入り込みますと光が反射を起こします。このとき、反射した光の成分の一部が微細構造により干渉を起こして打ち消し合う(消光)しますと、消光しなかった成分の光だけが最終的に反射されて、見ている者の目に届くことになります。この反射してきた光の成分が、ある特定の色となって見えているのです。どの成分の光が反射してどれが消光するかは、微細構造の形に依存するため、ちょっとした構造の違いで様々な色が見えることになり、結果として七色に光るように見えます。このような原理により発せられる色を「構造色」と呼んでいます。
 今回開発したゲル、実はこの「構造色」を作り出すゲルなのです。

「構造色」を作り出すゲルの原理は?


 具体的には、ゲルを構成する高分子鎖に「二分子膜」を作ることが可能な側鎖を導入します。このような側鎖は前駆体溶液中で二分子膜を形成し、さらにその前駆体溶液に一定のせん断応力を加えることによってこの二分子膜を一方向に配向させることができます。そしてこの溶液をゲル化することで、「二分子膜が一方向に配向したゲル」が完成します。以後、このゲルを本稿では「虹色ゲル」と呼びます。
 この虹色ゲルは、微視的には光を反射する膜が複数枚積み重なっている構造となっており、ここに光が入ると孔雀の羽等と同様に光が反射し、結果として構造色が見えるようになる、という仕組みです。
 ここでおもしろいのは、虹色ゲルの二分子膜の積み重なりが大変柔らかいため、外から力を加えることで容易に積み重なりの間隔を変えることができる点です。間隔が変わりますと、反射する光の成分が変わりますので、見える構造色が変わります。
 従って、虹色ゲルを引っ張ったり押したりすると、ゲルの色がみるみる変化します。さらに虹色ゲルには弾性があるため、引っ張ったり押したりするのをやめるとゲルが元に戻り、色も元に戻ります。
 この性質を利用すれば、このゲルを圧力センサーとして応用できそうですが、他にもアッと驚くような応用ができないかと、考えています。

メールマガジン読者の皆様へ


北大の研究者も思いつかないような、おもしろい応用アイデアをお待ちしております。


参考文献

一軸配向ラメラ構造をもつハイドロゲルの構造色とその力学応答
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 86〔8〕,290–294(2013)
ラメラ構造二重膜を有するハイドロゲルの光学的および力学的特性
高分子論文集 Vol. 70(2013) No. 7  309-316

研究室ホームページ

http://altair.sci.hokudai.ac.jp/g2/

最新成果

http://www.hokudai.ac.jp/news/140821_pr_sci.pdf

最新のシーズ技術はこちらでご覧いただけます
研究キーワード「ゲル」

Update 2018-11-09
北海道大学 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局 北海道大学研究シーズ集Webサイト
EARTHonEDGE北海道 DEMOLA HOKKAIDO 創業デスク 北海道大学 産学連携メールマガジン