研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2013/12/24公開)

◇高橋 大介 助教 北海道大学病院整形外科

股関節温存手術の3次元シミュレーターの開発

臨床医の視点から患者さんの将来に役立つ研究を


 幼い頃より解がたった1つに定まる数学(算数)、物理(理科)が大好きで、他科目の授業中に自分で用意した難しい問題集を勝手に解いているようなちょっと変わった学生でした。考えてみると、医学の理論的根拠には必ず物理化学の法則があり、その法則を根底で支えているのが数学です。医師の道を志すようになったきっかけは通院していた皮膚科の先生への憧れ(同じ整形外科医の父親の影響もあったかもしれません)でしたが、結局自分の好きな道に自然と向いていたのだと今では実感しています。
 私は現在、”股関節外科医”として大学病院に勤務しており、いわゆる”研究者”とは言えないかもしれません。整形外科臨床医になってからの数年間は明けても暮れても臨床に打ち込んでいましたので、基礎研究に全く興味がなかったと言っても過言ではありません。しかし、大学院生となって遺伝子病制御研究所分子免疫の上出利光教授の下で基礎研究をさせていただいてからその考えは一変しました。今まで自分が医学の世界の半分しか見えていなかったこと、また現時点で正しいとされている医学の多くが先人の基礎研究の上に成り立っていることに気付かされました。それからというものの研究の世界に深く興味を持つようになり、いつしか日常臨床から生まれた疑問を研究によって答えを導き出そうという考えが自然にできるようになっていました。現在は、産学連携のご協力の上で、より臨床に近いテーマとして「股関節温存手術の3次元シミュレーターの開発」などの研究を中心に進めております。

股関節温存手術の3次元シミュレーターの開発


 私の専門分野である”股関節”の代表的な疾患に「変形性股関節症」という股関節の軟骨が擦り減っていく病気があります。病状が進行すると歩行できなくなるという患者さんにとってつらい病気ですが、その多くは股関節の屋根となる”臼蓋”という骨が生まれつき小さい「臼蓋形成不全」が原因です。変形性股関節症の手術治療のひとつとして除痛効果の高い人工股関節置換術がありますが、脱臼や耐久年数の限界などの問題点があります。そのため特に若年者の臼蓋形成不全に対しては、臼蓋を球状にくりぬいて外側に回転させて荷重する面積を増やす「股関節温存手術」を行っています。ただ、現時点においては
股関節温存手術を行った患者さんが必ずしも長期にわたり正常軟骨形態を保てているわけではなく、中には軟骨が少しずつ擦り減って変形性股関節症に進行してしまう場合もあります。関節温存手術の術後成績をさらに向上するためには力学的解析を踏まえた正確な術前計画が必須ですが、現状では理想的なシステムはありません。そこで私たちは公立はこだて未来大学複雑系知能学科の加藤浩仁准教授のご協力のもと、手術前の3次元画像を用いて有限要素法解析などを行い、より安定した術後成績が獲得できる関節温存手術の術前シミュレーターを構築しようとしています。今回開発している術前シミュレーターが完成した時には、より多くの患者さんが痛みから解放されるような理想的な手術を行えるようになることを祈って今後も研究を続けていきます。
 またネクストシステム社が新たに開発した非接触性画像操作システムiKINESYSを発展応用することで、術前シミュレーターを術中に反映できるように同時に共同研究も進めています。

臨床医の発想を産学連携によって実現化・社会貢献へ


臨床医が「こうなればもっと患者さんのためになるのに」「こんなものがあればもっと正確に手術ができるのに」などと日々新しい発想をしても、それが現実的なのか、社会にどのように貢献するのかということも同時に考える必要があります。新たな技術を開発し、実現化していくためには大学研究者のみの力では困難であり、企業と連携を取っていくことが必須です。整形外科学分野では以前から多くの企業や関連施設との共同研究を行ってきましたが、北海道大学産学連携本部のご協力が益々必要な時代となっていくと考えます。今後も産学連携によって実現可能となるような将来性のある面白い研究を行っていこうと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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