研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2014/04/23公開)

◇岩間 和人 特任教授 大学院農学研究院 作物学研究室

国内の食糧生産技術の開発を目指して


開発途上国への放浪旅が研究者へのきっかけに・・・


 大学卒業後に1年間、アジアや北アフリカを放浪した。その間に多くの人たちの世話になり、また外国、特に開発途上国の人たちの状況を知った。偶然に豊かな日本に生まれた人間の役目として、これらの人たちの役に立つ仕事をしたいと思った。自分の能力から、研究者が最も適していると考え、大学院に入り、研究者の路を進むことを決心した。

バレイショの研究


 バレイショは生産力が高く、世界各地で重要な食料として利用されている。しかし、他の畑作物に比べて、根の発達が悪いので、乾燥や肥料の少ない条件下では生産力の低下が著しい。開発途上国では潅漑施設や化学肥料の使用が制限されているので、欧米諸国に比べてバレイショの生産性は低い。そこで、これまで研究されることの少なかった養水分器官の根系に着目して、生育途中での発達や品種による差異を明らかにしてきた。さらに、根量の増加を選抜指標にした育種を行い、既存の栽培品種に比べて根量が2倍程度と大きい品種「根優」を2007年に農林水産省に種苗登録した。根優品種は土壌表層の根量が多いだけでなく、1メートル程度の土壌深層での根量も多い。このため、養水分の充分ある条件下では既存品種と同程度以上の生産力を示し、かつ、養水分の少ない条件下でも生産力の低下が少ない。日本は降水量が多く、また化学肥料も充分に使用できるので、根優品種のメリットは少ないが、化学肥料を使用できない有機栽培では既存品種に比べて養水分の吸収能力が高く、生産力の低下が少ないことがわかってきた。また、収獲した塊茎のでん粉含有率が高いので、でん粉生産やこれを利用した加工食品材料としての需要を期待できる。

国内の食糧生産技術の開発を目指して


 米国のカリフォルニア大学・デービス校に1ヶ月程滞在して、バレイショの根を調査した。その実験圃場では大学院学生が潅漑用パイプを運んで、試験区に水を与えていた。日本の成田に着いたら、雨が降っていて、天から水を与えてくれていた。日本はなんと幸せな国かと思った。その後も、外国から日本に近づき飛行機の窓から地上を見るたびに、緑の多い、水の豊富な国だと思った。そのような恵まれた国にもかかわらず、日本は日々の食料の多くを外国から輸入し、自国での生産に熱心ではない。この50年ほどの経済的な豊かさがいつまでも続くという保証はないので、将来の子供達が飢えに苦しむことのないように、国内での食料生産技術を開発することが現在に生きている私たちの役目だと思う。

研究室のご紹介


 私の所属する作物学研究室は、古くは農学部食用作物学講座に由来していて、代々、圃場を利用した研究を行ってきた。圃場での研究は生育期間中の天候に左右されるので、一定の成果を得るためには多くの年月と労力を必要とする。このため、実験室内での研究に比べると論文を書くのに時間がかかる。しかし、農家は作物を圃場で栽培しているので、農家に役立つ技術を開発するためには圃場での研究をなくすことができない。現在、日本の多くの大学農学部では圃場での研究がほとんど行われなくなっている。北大の作物学研究室は圃場での研究を中心にして研究を進めている数少ない研究室の一つである。

研究室ホームページ

http://www.agr.hokudai.ac.jp/botagr/sakumotsu/index.htm
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局