研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2014/09/24公開)

◇志村 華子 助教 農学研究院 生物資源生産学部門 園芸緑地学分野 園芸学研究室

RNAサイレンシングを利用したウイルスフリー化技術に取り組む


現在の研究について


(1)ランと菌の研究からウイルスの研究へ
 今回ご紹介する志村先生は札幌市の出身で、植物、特に花が大好きで、植物を研究するために北大農学部に進学しました。学生時代は作物生理学研究室に所属し、レブンアツモリソウ*の人工培養に関する研究に携わってきました。特に、種子が発芽する際に必要な共生菌の研究を担当されたそうです。レブンアツモリソウに関わるプロジェクトは2013年まで継続し、志村先生もずっと関わってこられたそうです。学生当時に培養していたレブンアツモリソウはその後開花に成功し、北大植物園で見ることができます。博士課程を修了後、森林総合研究所北海道支所に所属し研究を継続する一方で、花屋でのバイトも経験されたそうです。その後、博士研究員として農学部細胞工学研究室に所属し、植物へのウイルス感染のメカニズムについて基礎的な研究を行ってきました。2011年より園芸学研究室の助教として着任してからは、「RNAサイレンシング*¹」の研究で得られた知見を、アスパラガスやニンニクなどの農作物のウイルスフリー化に応用するなど、実用化研究も積極的に取り組んでいます。



(2)RNAサイレンシングを利用したウイルスフリー化技術
  アスパラガスやニンニクにウイルスが感染すると、収量や品質が低下する、他の病気にもかかりやすくなる、など様々な問題が起こります。実は、市販のアスパラガスは全て何かしらのウイルスに感染しており、ウイルスフリーであるアスパラガスは世界中どこにもないそうです。通常のウイルスは植物の茎頂組織*²には入れないため、種子はウイルスフリーとなるのですが、アスパラガスに感染するウイルスは茎頂にも入り込むため、種子にまで感染が引き継がれてしまうそうです。そこで、細胞工学研究室の増田教授と連携し、ビタミンCがRNAサイレンシングを促進することで抗ウイルス効果を示すことを利用し、茎頂培養時にビタミンCを用いることによって世界で初めてウイルスフリーアスパラガスの開発に成功しました。
 またニンニクについても、北海道のニンニクに感染しているウイルス(アレキシ属ウイルス)は茎頂にも感染するため、通常の茎頂培養ではウイルスフリー化が困難でしたが、ビタミンCを用いたことでウイルスフリー化に成功しました。
ウイルスフリーアスパラガスは、今後、品質分析を行うと共に、圃場での栽培試験も行っていくそうです。ただ、アスパラガスが収穫できるまでには3年以上かかるので、どんなアスパラガスが出来るのか期待が膨らみます。すでに名寄市農業振興センターや(有)植物育種研究所と連携し、圃場での栽培については協力して行っていくそうです。

子育てと研究と奮闘中


 現在、1才と2才のお子さんを持つ志村先生。限られた時間をフル活用して研究に取り組んでいました。お子さんがまだ授乳中だった頃、礼文島から九州まで、子供を連れて出張していたそうです。やはり小さい子供がいると、自分の仕事のペースがそれまでのようには動かないとのこと。研究者として、自分の知見を広げるために多くのことを学んだり、研究費を獲得したり、プロジェクトに参画したりなど色々としなければならない時期と、結婚や出産の適齢期、育児期が重なってしまうことも、女性ならではの問題です。女性研究者の活躍が望まれる一方で、お子さんを持つ女性研究者が抱えるハンディキャップは非常に大きいと感じました。
志村先生には様々な困難を乗り越えて、北海道の農業の発展のために活躍して頂きたいです。

参考


 レブンアツモリソウ:特定国内希少野生動植物種に指定されている花で、礼文島にのみ生息するランです。
礼文町HPより礼文花図鑑
http://www.town.rebun.hokkaido.jp/hanazukan/6/atumori.html


RNAサイレンシング:遺伝子の発現制御を担うRNA分解メカニズム。植物では,ウイルス感染の防御システムとしても機能する。


茎頂組織:植物の茎の先端部分。細胞分裂が行われており、この部分を採取し培養することを茎頂培養と言います。
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局