研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2015/08/21公開)

◇堺谷 政弘 准教授 大学院薬学研究院 創薬科学研究教育センター

アカデミア発の新薬を


今は二度目の人生


そうおっしゃる堺谷先生の研究者になるまでの道筋は、紆余曲折の連続でした。

最初に入学した大学は防衛大学校。研究者ではなく、航空機のパイロットになることが少年時代の堺谷先生の夢でした。
ところが入学後の視力低下によりパイロットへの道を閉ざされ、失望した堺谷先生は防衛大学校を10月に中途退学してしまいます。

それからは二度目の人生。仕切り直しで、受験に間に合った大学、学科をいくつか受験しすべて合格。他大学の電子工学科や建築学科にも合格していたそうですが、最終的に選んだのは「家から通えるから」という理由で、関西学院大学の理学部化学科に入学。
その後30年以上続く化学者としての第一歩は意外な理由でスタートしたのでした。

その後も紆余曲折は続き、卒業研究は配属予定先の講座の教授の都合により、学外のサントリー生物有機化学研究所(生有研)で研究活動を行う羽目に。

しかし生有研での研究がおもしろく、堺谷先生はここで将来、科学者として生きていくことを決心したそうです。

大学卒業後は大阪大学大学院に進学し、修了後、生有研に研究員として就職。その後ハーバード大学に留学して分子生物学と分子薬理学の知識も得た堺谷先生は「有機化学と生物学のわかる研究者」としての実力を買われ、世界的に有名な大手製薬企業であるロシュの鎌倉研究所に転職されます。
そして北大に来るまでの20年弱の間、創薬研究の最前線で活躍をしてきました。

現在の研究活動


現在は北海道大学大学院薬学研究院に設置されている創薬科学研究教育センターで低分子医薬品の創薬支援を行っています。具体的には、

1)学内外の研究者からの病気の原因となる遺伝子、タンパク質、細胞等に関する創薬シーズ発掘のための創薬相談会を開催し、その情報等を元に、
2)数千~数万種類の有機化合物(化合物ライブラリー)から医薬品開発のタネとなるヒット化合物の探索(スクリーニング)を支援し、
3)ヒット化合物を改良してドラッグライクネス(化学構造等から半経験的に推定される“医薬品らしさ”)を改善し、
4)改良した化合物の医薬品としての適格性(薬効、安全性など)を動物実験等で評価する、
という一連の作業を支援、又は共同研究者と共同実施しています。

また堺谷先生グループ独自の創薬案件もあり、1つはパーキンソン病を対象とした治療薬の開発、もう1つはがんを対象とした血管新生阻害薬の開発を行っています。医薬品ビジネスでは物質特許の取得が極めて重要なので、これら独自案件の成果発表は今後、特許出願が済んでからとなりますが、それぞれ順調に進んでいるようです。

他には、学内外に開放している共通実験機器の利用促進や、創薬に関する教育活動にも力を入れています。

産学連携・社会貢献に対する考え


堺谷先生が製薬会社を離れて北大に来たのは「アカデミア創薬(大学などの研究機関の研究成果をベースにした創薬)のとっかかりを作りたいから」とのことでした。

医薬品特許1つで数百億円、数千億円規模のビジネス成否が決まる医薬品業界では、言うまでもなく特許が最重要視されます。一方で、大学のようなアカデミア界に所属する研究者にとっては、最新の研究成果をいち早く世界に向けて発信することが自らの業績につながることから、特許出願よりも学会発表や論文発表を優先する傾向があります。

しかし、一度でも公表された研究成果は、その後、原則として特許を取れません。

このようなアカデミア界と医薬品業界の考え方の違いから「アカデミア界で創薬は無理だ」とおっしゃる方は今でも数多くいます。
しかし一方で、自由な発想で研究を行うアカデミア界には、製薬会社が知り得ていない新たな知見や実験手法が日々たくさん生み出されています。また製薬会社が容易に入手できない臨床サンプルなども多数保有しています。

これらの強みを活かして、アカデミア発の新薬を次々と生み出し、国民の健康維持に貢献するとともに医薬品分野における国際競争力を取り戻すことが今の日本で求められています。

堺谷先生の今後の益々のご活躍に期待しましょう。

研究室ホームページ


北海道大学大学院薬学研究院創薬科学研究教育センター
http://japanese-apricot.pharm.hokudai.ac.jp/
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局