研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2016/06/21公開)

◇村田 史郎 助教 大学院獣医学研究科 動物疾病制御学講座 感染症学教室

生産現場への貢献を目指して


研究者となった今とその経緯


現在私は、鶏のウイルス感染症および外部寄生虫病に関する研究を行っています。いずれも養鶏場で問題となっている疾病です。

医学分野のみならず獣医学分野においても、薬やワクチンの開発、衛生環境の改善によって、様々な疾病の脅威から開放されてきました。

ところが、未だに治療や予防が困難な慢性感染症や腫瘍疾患などの疾病は多く存在します。通常であれば病原体が生体に侵入すると、動物は免疫によって対抗し排除します。
しかし、予防や治療が困難な疾病では、病原体が動物の免疫をかいくぐる術を持っています。新たな治療法や予防法を開発するためには、その仕組みを理解することが重要です。

この「仕組みを理解する」ことが、研究の興味の根幹にある部分です。

高校を卒業した後、運良く北海道大学獣医学部へと進学することができましたが、当時は自分が研究者としての職に就くことはおろか、まさか将来鶏の病気を研究することになるとは想像もしていませんでした。

学部学生時に研究室の配属先を選択する際、ウイルス感染症の研究に興味があったこともあり、現職場でもある感染症学教室に所属させていただきました。学部生・大学院生時には、鶏のウイルス病をテーマとして与えていただき、研究を行いました。
幸いなことに現在も引き続き同じ疾病を対象とした研究をさせていただいております。

研究に携わってきた期間はまだまだごくわずかでありますが、その短い期間だけでも、フィールドの異なる様々な方々と接する機会に恵まれました。

生産現場の方々、行政の方々、メーカーの方々、生態学者の方々…。このような多くの方々と接することで、多様な知見にふれ、問題点を知ることができ、新たな研究(鶏の外部寄生虫に関する研究)をスタートさせるきっかけにも繋がりました。

思い返せば現在の研究内容に至るまで、多くの幸運が重なっていたように思います。その中でも人との繋がりの重要性を強く感じます。

生産現場への貢献を目指して


現在、私は腫瘍ウイルスの感染が原因でひき起こされる鶏の疾病であるマレック病の研究を行っています。

このウイルスは、鶏に感染すると免疫担当細胞の1つであるT細胞を腫瘍化させ、悪性リンパ腫を鶏にひき起こします。かつては養鶏産業に大きな損失を与えていましたが、現在ではワクチンの開発により、その発生は激減しました。

ところが、最近ではウイルスの病原性増強が原因と考えられる、ワクチンブレーク(ワクチン接種にも関わらず発症すること)が世界各地で報告されるようになっています。日本においても毎年、散発的ではありますがマレック病の発生は未だに確認されています。

そのため、より効果的に生産現場でのコントロールが可能となるように、病原性の増強に関わる要因を解明し、より高い有効性が期待できるワクチン開発に向けた研究に取り組んでいます。

もう一つ最近取り組んでいる研究があります。こちらはウイルス感染症とは関わりは無いのですが、「ワクモ」という非常に小さな外部寄生虫に関する研究です。
ワクモは吸血を行い成長するのですが、自身にとって至適な環境が整うと、一気に個体数を増やします。そして大量のワクモが一度に吸血することで鶏に貧血を引き起こし、健康状態を悪化させ、生産性を低下させます。

この問題は世界中の採卵鶏農場で認められており、新たな対策が必要とされているところです。この体長1mmにも満たない小さな寄生虫がひき起こす大きな問題に対して、新たな防除方法を模索しています。

このように私の研究内容は、主に、今問題となっている鶏の疾病を扱っています。その点では、得られた成果が社会貢献に結びつきやすい研究にあたるかもしれません。一つ一つの内容は地味かもしれませんが、生産現場への貢献を目指して今後も研究に取り組んで行きたいと考えております。

産学連携について


先にも述べたとおりですが、私は現在、養鶏場で問題となる鶏の腫瘍ウイルスおよび外部寄生虫に関する研究を行っています。これら研究の最終的な目標は、得られた研究成果を社会へと還元し、役立てることです。

しかしながら、大学の一研究室のみで目指すには非常に困難であり、産学連携の重要性を強く感じるところです。幸いなことに、私たちの研究内容にご賛同いただき、ご支援・ご助力いただける方々に恵まれ、少しずつではありますが研究を進めるに至っています。

「産」と「学」にとって、お互いのニーズを知る機会が増えることで、大学における研究成果が社会に還元される機会も増えることと思います。
そのためにも研究で得られた成果を積極的に発信していくことも研究者としての重要な役割と考えています。

研究室紹介


私の所属する研究室では、大橋和彦教授、今内覚准教授と共に、獣医学領域における難治性疾病(腫瘍性疾患や慢性感染症など)への新規治療法、予防法、診断方法の開発に力を入れて研究を行っています。

私自身は主に鶏病について研究を行っておりますが、その他産業動物や伴侶動物の難治性疾病についても、新たな対策方法を目指した研究に取り組んでいます。

北海道大学大学院獣医学研究科 動物疾病制御学講座 感染症学教室
http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/gsexaminationnew/detail/animal/infectiousdiseases/
http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/organization/infect/index.html

北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
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