研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2016/07/25公開)

◇神田 敦宏 特任講師 大学院医学研究科 眼科学分野

見える喜びの光を守るために


研究者となったきっかけ


今から思えば、子供の頃に親が購入してくれていた学研の「科学」がきっかけとなり、科学に「何故?どうして?」と興味を持ったことが始まりだと思います。

学校で色々と勉強していく中で文系の科目より理系の数学・理科・生物などに興味を持ちました。
そして、大学進学で将来のことを考えたとき、何か世の中に貢献出来る(医療など関わる)仕事に就きたいと思いました。

そして大学は薬学部に進学し、病気のことや薬のことを学んでいく中で疾患の治療・病態形成のメカニズム解明に関係する研究を行いたいと思うようになりました。幸いに大学院生のときの研究テーマは、若年性パーキンソン病の原因遺伝子の機能解析を行っていました。

博士取得後は、さらに色んなことを勉強したく留学を視野に入れました。
留学先としては様々な選択肢がありましたが、アメリカのミシガン大学の眼科の研究室を選びました。

ヒトは、外界から得る情報の8割を視覚に依存すると考えられています。また、眼という小さな臓器ですが複数の組織から構成されており、組織発生学・神経科学・血管生物学・遺伝学などの領域でよく研究がされており、とても興味深い臓器だと思ったからです。

そこは網膜色素変性や加齢黄斑変性という疾患や網膜(カメラで例えるとフィルムに相当する組織)の発生を中心に研究していた研究室でした。留学した当初は、英語のみならず眼の構造から勉強していました。

それ以来、眼という臓器の面白さに惹かれて眼科の研究を10年以上行っています。

しかし、研究者となるにも悩みました。
大学院に進学するとき・博士号を取得するとき・留学するとき・帰国するときなど「このまま研究者でやっていけるか」という不安などがあり、自分自身に問いかけていました。

結構な時間を掛けて悩みましたが、(ありふれた理由になりますが)自分自身のやりたいことやっていきたい、知りたいことを知るという知的好奇心がDriving forceとなって幸いなことに現在研究者として仕事を続けることが出来ています。

原因の解明と早期介入出来る治療薬の開発


留学時代の流れを継いで網膜にターゲットを絞ったテーマで、特に日本人の失明原因の上位に上げられる糖尿病網膜症、加齢黄斑変性など生活習慣病に関連がある疾患に関係する研究を行っています。

日本は超高齢社会を迎え、眼をはじめとする感覚器や循環器臓器の健康を維持することは、Quality of Lifeの向上に直結する重要課題となっています。

しかし、我々を取り巻く環境は昔と比べ大きく変わり、ライフスタイルの欧米化などで様々な危険因子が生活習慣病の発症・進行を助長しています。
結果、肥満・糖尿病のみならず動脈硬化、さらには重症度の高い心腎障害、眼科領域では失明に至る糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの網脈絡膜疾患に陥ります。

これら疾患は終末病態として炎症・血管新生・線維化をきたし、生活習慣病に合併した血管症と位置づけられています。
眼科領域ではすでに血管内皮増殖因子阻害薬が臨床応用されていますが、終末病態で介入するため神経網膜の不可逆的変性による限界も認められています。
そのため、さらに上流の経路に早期介入(慢性化前に)する戦略の確立は急務です。

そこで現在、大きく2つのテーマを行っています。
一つは、病態形成メカニズムの解明です。糖尿病網膜症など様々な疾患の病態形成には、多数の分子が複雑に絡み合っていると考えられますが、その絡み合った糸を少しずつ解いて、どうして病気になるのか?の原因を明らかにすることです。

もう一つは、どうしたら治せるか?早期介入出来る治療薬の開発です。一つ目の研究テーマより、炎症・血管新生の上流で網脈絡膜疾患の病態分子を制御している分子をいくつか絞り込むことが出来ています。
そこで、その分子を標的にして網羅的な低分子化合物スクリーニングや医薬分子設計法などの技術を用いた創薬を視野に入れた基盤研究を展開しています。

この研究テーマには薬学など他分野の研究者の方々にも参加して頂き、広い視野に立った取り組みが行われています。
さらに疾患動物モデルを用い、その分子の機能解明および生理的機能への影響を最小限にしながら慢性炎症病態を抑制する早期介入治療戦略の確立を試みています。

産学連携について


先にも述べましたが、現在薬学研究院などの先生方と共同で創薬研究を行っております。
しかし、大学の研究者のみでは発信力が足りませんので、企業方々とのも連携して、糖尿病網膜症をはじめとする網脈絡膜疾患の新規治療薬を開発して、社会に還元出来ればと思っています。

研究室の紹介


人間の眼球は直径が24㎜程度で、その中には角膜・水晶体・ぶどう膜・網膜・視神経など非常に繊細なパーツがあり、小宇宙にも例えられています。

現在、所属する眼科学分野は石田 晋教授と野田航介准教授をはじめとして、眼免疫学、網膜細胞生物(血管)、網膜細胞生物学(神経)、眼腫瘍・病理学、角膜細胞生物学の5つの研究グループがあります。

当研究室の研究体制は、すべてのパーツについて広く深く研究している点が最大のメリットです。
大学院生も複数人所属しており、最近では海外からの留学生も入るなど活気のある研究室です。

北海道大学大学院医学研究科 眼科学分野
http://eye.med.hokudai.ac.jp
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局