◇対談◇ 北大のシーズを元にタマネギの新ブランド化に成功!そのコア技術とは

※インタビューは取材日時点の情報ですので、内容やリンク先が変わっていることがあります


左から:木曽部門長、川端機構長、岡本社長、牧内副機構長


有限会社 植物育種研究所


  • 代表取締役 岡本大作


北海道大学産学・地域協働推進機構



平成28年8月9日の第2回北大発ベンチャー称号記授与式で
有限会社植物育種研究所 代表取締役 岡本大作氏」に称号記が授与されました。

岡本社長は、品種改良による世界初の機能性タマネギの開発・製品化により、タマネギのブランド力を構築しました。
社員数人の有限会社という運営ですが、新しい高機能食材の開発にもチャレンジしています。

授与式後の対談で「創業・技術・経営・大学との関係」について伺いました。

創 業 ── 世の中に無いようなものを ──


牧内:岡本さんの取り組んでいるイノベーティブな部分をご紹介ください。

岡本:農学部農芸科学を91年卒業後、一年間奨学金でデンマークへ。デンマークでは農水省の研究所に勤務していました。さらにその後、タキイ種苗に就職し、野菜の品種改良でブロッコリーの育種などを担当していました。

大手メーカーは流通向けの育種をしていました。一つの品種を大量に売るために生産者・流通に向けて「規格内に揃う」「日持ちする」「機械で収穫しやすい」「見た目が良い」という育種目標でした。

消費者に向けて「世の中に無いようなもの」を開発したかったため8年で退社。その後、出身学部の社会人コースで学位を取得しながら今の会社を立ち上げ13年が経過しました。

技 術 ── 機能性育種とブランド化 ──

川端:岡本さんの会社のビジネスモデルは、今までは種をタマネギ農家に渡してタマネギを買い、それを売っていたところから「共同研究モデルに移った」ということですか?

岡本:種の世界は「10年で一品種が開発できる」という世界です。大手のメーカーと同じ目標で競争しても勝ち目がない。差別化を図るため「おいしく食べて健康に」との考えから健康に特化した機能性育種の開発を行いました。タマネギを中心に品種改良し、世界初の機能性タマネギ「さらさらレッド」を北海道栗山の特産品にしました。

本来は種をたくさん売ったら儲かるのですが、私はF1ハイブリッドの種を無償で生産者に渡して、生産したタマネギをすべて買い上げて販売しています。これまで誰もやってこなかったことであり、私が管理してブランドを作り、種から消費者に届くまでを一貫して付加価値を高めて垂直統合したいと考えています。「スタートである種」で差別化を図り、最上流でブランド化することで、川下(販売)まで事業化するということです。

今は、ハウス食品、キッコーマン、デルモンテ、味の素、大塚食品、三井物産と共同研究開発を行っています。一番新しい研究は、日本で最も多くタマネギを使う会社であるハウス食品との共同研究開発で「涙のでないタマネギ」の開発、生産・販売を実現させました。これまでハウス食品はタマネギの辛味に関する基礎研究でネイチャーに論文を掲載しました。その後、当社との共同研究で、交配を8年ほど繰り返し「涙の出ない」(=辛味のない)タマネギを作出したものです。

人類が5000年間、「涙が出ないタマネギがあればいいな」と思っていたことが自分の会社が携わる研究で開発できました。そのことにより、これまでは絶対に組まないと思っていたような種子メジャーと呼ばれる企業からも共同プロジェクトの依頼もあり、出資の申し出や研修生の受け入れ依頼がきます。世界の大手企業から当社のような北海道の小さな会社に「ライセンスしてほしい」、「一緒に組みませんか?」といったオファーが来ていてこれまでには考えられないような状態になっています。

※ハウス食品グループとの研究はどうしんウェブ7月26日に
『「涙の出ないタマネギ」今秋販売、北海道産ブランド狙う 』として掲載されました。

経 営 ── 商売にたどり着くには ──


川端:種苗は結果が出るまでに時間がかかりリスクも高く、ビジネスモデルとして統合するには難しいと思うのですが、ベンチャーでその部分を商売にたどり着けたことは素晴らしいですね。交配設計はこちらにあるのですか。

岡本:はい、交配の設計はこちらにありますが、遺伝的なDNAマーカーや分析技術などはハウス食品が持っています。ちょうどお互いに得意な分野でやりとりができたと思います。現在は国内外の特許を取得し、販路は全世界を視野に入れています。

川端:ビジネスパートナーなどはどうお考えですか?これから外側に向けたプロジェクトをやっていく場合、交渉するに当たって誰かが必要かと思います。また、出資についてはどのように考えていますか?

岡本:外側に向けたプロジェクトに向けCOIなどで、ビジネスパートナーの必要性も考えていますし、また、最先端の技術を現場に繋ぐものとして、これまでに行ったこともあるMOTやインターンシップなどでの役割の重要性も再認識しているところです。

自分のシェアを維持するためには自己資金が必要です。今までは自分に資金がないため出資もいただかない、ということでやってきました。
当社はスモールビジネスではありますが、どうにかやってこられた理由として、一つは「技術の見極め」、それから、先のニーズを読んでマーケットインで仕事をしてきたこと、最後に私は補助金で仕事をしていないので「成功させるしかなかった」のです。

「この仕事を成功させないと路頭に迷う!うちの家族が食べていけない!後がない!何が何でもやらなければ!」という状態で、自分のお金でやるしかない状態であったためです。

大学との関係 ── 最先端の技術と現場をつなぐ ──


牧内:大学発ベンチャーということで、岡本さんは大学に対してどの様に考えていますか?また、なにかご提案のようなものはありますか?

岡本:提案というようなものではありませんが、今まで自分の会社を紹介しても、「そんな人、そんな会社聞いたことが無い」という状態がありましたが、大学と一緒に研究をすることにより「大学のブランド」を使わせていただくことができ、信用が高まり、お互いに良い効果があると思っています。

農業分野では、これまで最先端の技術と現場をつなぐ人が少なかったので、私がそういう人になりたいとずっと言い続けてきました。今は多少なりともそのようになれてうれしいです。
MOTの授業を担当させてもらったとき、講義を聞いて興味を持った学生は休みの日に当社農場に自費で来ました。そこで「本当は興味を持っている学生は多いんだな」と実感しました。授業の後も質問がたくさん出て、私がなかなか帰れないくらいになった事がありました。外部からの目線で授業をするのもいいことなのだと思いました。私は教科書に書いてあることではなく、自分のやってきたことのみをお話しています。

川端:現実論なので、学生には何か感じ取るものがあるのでしょうね。


木曽:岡本さんの会社とは、競争的資金等を活用しながら共同研究を、是非一緒にやらせてもらえたらと思っています。

岡本:育種は時間がかかりますが、「コア」技術は私の一番得意なところなので、他からの指示でなく自分の考えで決定したい部分です。事業化については、別会社のようにして連携企業の力を借りてプロジェクト化していくようならば可能です。

川端:成果を挙げるまで長期間の研究、交配を繰り返さなければならず、資金面では少なからずご苦労があったとのこと。
北海道大学としては岡本さんの会社のようなところをしっかりと支えていくようなモデルを作っていきたいと考えています。また、大学の先生が責任を持ちながら大学の子会社を作っていこう、という動きもあります。

大学が出資し、大学側がやるべき事をやる。ベンチャー企業ではなかなかできづらい資金調達やビジネス面のサポートなどもできるシステム作りが必要だと思っています。


北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
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