研究者紹介

【その他】 (2017/01/23公開)

寺島 洋史 准教授 大学院工学研究院 機械宇宙工学部門

コンピューターに負けない高速化を目指して


きっかけと駆動力


子供の頃から飛行機やロケットなど速い乗り物に憧れがあり、航空工学を学びたいと思い、航空学科があった東北大学に進学しました。修士課程の時に、もう少し勉強したいな、就活するのではなく、他の人と違う道もいいかなと思い、博士課程に進みました。
博士課程では、大学進学のきっかけとなった航空機に関する研究(フラッターと呼ばれる流体構造連成現象に関する研究)を行い、博士の学位を取得しました。

博士課程修了後、幾つかの研究機関で働いている中で、少しずつ新しい考え方や技術(私の場合、熱流体シミュレーション)を提案できるようになっていきました。この自分で考えたアイディアがうまくいき、何かを初めて達成した時のわくわくする感覚が楽しみで、研究活動を続けています。
 
また、私が博士課程時に所属していた研究室(JAXA宇宙科学研究所の藤井先生)には、博士課程の学生が沢山おり、切磋琢磨しつつ、非常に楽しい学生生活を送ることができました。多くが私と同じように研究者となっています。同世代の彼らとの交流や彼らから受ける刺激は、研究者として活動する大きな駆動力となっていると思います。
私の専門は、数値流体力学と言われる分野で、流体現象を支配するNavier-Stokes方程式をスーパーコンピューターなどの高性能計算機を用いて解き、得られた流体現象の解析(物体に作用する流体力やどういう現象なのかを明らかにする)を行うものです。
方程式を解くための解析手法は多数提案されていますが、対象となる流体の種類や条件によって、解析がうまくいったりいかなかったりします。

数値解析研究の醍醐味の一つは、既存の数値解析法ではうまく解析できない問題に対して、新しい考えや手法を導入し、これまでできなかった解析を可能にする、ところにあります。

近年は、液体ロケットエンジンの研究(以前JAXAに勤務した際に携わった)をきっかけに、流体と化学反応の連成現象となる反応性流体、特に燃焼流れのシミュレーション研究に力を入れています。流体と化学反応現象は、それぞれの時空間スケール差が大きいため、数値解析技術にも工夫が必要になります。従来取られていた手法では、化学反応現象は無限に速い仮定を導入するなど、比較的簡素にモデル化されてきました。この簡素なモデル化では、自動車エンジンなどで重要となる着火タイミングといった非定常現象の解析が困難となり、化学反応の詳細モデル化(詳細反応機構の適用)が求められます。

私たちの研究グループでは、解くことが困難であった化学反応方程式に対して、効率的な新しい時間積分法を開発し(現時点において、世界で一番速いと思います)、化学種バンドル法と呼ばれる手法(特性が似た化学種をグループ化し、計算負荷を軽減する)と併用することで、非常に効率的な燃焼流れシミュレーション技術の開発に成功しています。

本シミュレーション技術は、幸いに自動車会社の研究者や開発者に注目してもらうことができ、ノッキング現象などを切り口に、共同研究を継続的に実施しています。ノッキングは、自動車開発の初期から問題となっているよく知られた現象ですが、未だに決定的な解決策が見つかっていない興味深い現象でもあります。流体と化学反応が強く連成する現象であり、本シミュレーション技術の見せ所と思っています。数値解析を通して、ノッキング抑制に対して、革新的な考えを提案することを目指しています。

一方で、本シミュレーション技術を開発の現場で気軽に使えるようになるには、更なる計算高速化が必要です。スーパーコンピューターをはじめ、計算機性能は向上していますが、そればかりに頼ってもいられません。私たちの知恵で、コンピューターに負けない高速化を目指し、研究を行っています。

産学連携で積極的に技術展開を


産学連携では、最も基本的な「産のニーズと学の興味を成果という形で一致させる」、ということがとても重要だと感じます。共同研究開発といいつつも、お互いの目指す所が一致していない場合があるからです。学会や講演会が、産と学の出会いの場の一つかと思いますが、産学・地域協働推進機構を通して、より良いマッチングを見つけられたらと思っています。ご興味があれば、ぜひお声がけ下さい。

数値シミュレーションは、非定常の時空間情報を詳細に得ることが可能で、実験計測が困難な現象や気付かれていないことを明らかにできる可能性があります。シミュレーション技術によって、今まで考えられなかった技術提案ができれば良いと思っています。また、シミュレーション技術は、一部の解析手法だけでも、サブルーチン単位で使ってもらうことが可能ですので、その良さをアピールし、積極的に技術展開したいと思っています。

現在、大学におりますが、学生には、私が感じてきた研究の面白さを伝えることができればと思っています。産との共同研究は、研究の先にあるものを意識させることができ、学生のやる気を引き出す上で、重要な要素の一つです。多角的な研究教育活動から、次世代の研究者を育成したいと思います。

研究室紹介


大学院工学研究院 機械宇宙工学部門 
計算流体工学研究室
http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/fluid/index.html

研究室には、教員3名と、約20名の大学院生と学部生が所属しています。留学生、海外からのインターン生など積極的に受入れており、近年の北大と同様に国際色豊かな研究室です。


(執筆者:前列右から二人目)

北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局