◇対談◇「セラミックスの省エネルギー生成~環境に配慮した資源の有効活用~」

※インタビューは取材日時点の情報ですので、内容やリンク先が変わっていることがあります


左から川端機構長、中田代表取締役社長、牧内副機構長


株式会社 燃焼合成


  • 代表取締役社長 中田 成


北海道大学産学・地域協働推進機構


燃焼合成法による省エネルギー、短時間での無機化合物等の合成。環境に配慮した資源の有効活用を通じて社会に貢献すべく、日々研究を重ねている 株式会社燃焼合成 中田 成 代表取締役社長に起業のきっかけや技術、そして今後のビジョンなどをお話しいただきました。(2017年2月6日)

技術 ~燃焼合成法とは~


中田:2011年11月北海道大学との共同研究から会社を設立しました。それ以前はマグネシウムハイドライド、水素化マグネシウムを作る手法として「燃焼合成」を開発していました。ですが会社設立前にその手法がマグネシウムに限らず、窒化物・酸化物・硫化物を製造できる技術だということがわかりました。

アルミダイカスト法で部品を製造するために必要なホットチャンバー方式で使用する「グースネック」やアルミを溶かす「炉」などをセラミックの材料で作るのですが、これは小さい物でも20~30万円と高額のため、自分達で作ろうと考えて、安価に製造できる技術を探していたところ、北海道大学 工学研究院付属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター秋山友宏教授が開発した「燃焼合成法」にたどり着き、その手法を展開して窒化物を作れるようになり、それが出発点となりました。

使用する材質の中でも「サイアロン」という材料がアルミダイカストの用途や化学的に、さらに高温でも非常に安定しているということでスタートしたのですが、ホットチャンバーでは市場が非常に小さく、なかなかビジネスにならなかったのですが、3年ほど前に同じセラミックスでも市場性のある熱伝導性の高い窒化物材料の方へシフトしていきました。

それが窒化アルミニウムや窒化ケイ素の低コスト製造です。これはLED等の発熱性電子機器の放熱材料として注目を集めています。窒化アルミニウムは、熱伝導性の高いセラミックスのことで、今後はファインセラミックスの量産化も視野に準備を進めています。

そこで生産技術を高めるため、札幌東区に50キロの燃焼合成炉を二基設置し、窒化ケイ素用と窒化アルミニウム用としています。平成24年、経産省のサポイン事業に採択され、平成27年3月に終了したのですが、その支援をいただいたおかげでサイアロンの合成技術を高めることができました。また、サイアロンについては、蛍光体材料としても注目されています。高純度化や生産技術の進展によって、高発光の材料開発を行っています。

川端:シフトしたのは、単にそれが「できるから」ではなく、マーケットを見通してのことですね。これまでの技術と現状について、試みたところから比較してみると現状はどうでしょうか。


中田:窒化アルミニウムについては2社が国内で製造販売しています。ほぼ独占です。
窒化ケイ素についても同様に他の2社で90%のシェアで製造販売しています。私たちの会社では、これらの製法よりも低価格で仕上げられる製法なのです。

燃焼合成法というのは無機物質の自己発熱反応を利用してエネルギーを与えなくても合成が進んでいくのが特徴なので、非常に安定製造することが可能な方法です。使用するエネルギーも従来の10分の1程度と少なく、さらに短時間で反応が進み、4~5時間で50キロの合成ができます。

牧内:従来の製造工程をすべて入れ替えできるほどの技術、ということのように思えますね。

中田:コストメリットとしてはそうなのですが、コンタミネーションの問題が発生してきます。
たとえばA社の窒化アルミの粉は非常に高純度です。当社とは異なった製法で1~2ミクロンの球状粉の製造法です。当社の製法「燃焼合成法」ではブロック(塊)での製造となります。ブロックを粉にする場合は粉砕工程があり、そこで不純物の混入割合が高まります。

窒化ケイ素については、2社が市場を二分しています。粉体よりも、部品にした方が10倍の価格として収入が見込めるのですが、弊社は、その段階にはなっていません。現状としては、1ミクロンの粉体を製造して成形体にする課程が始まったばかり、というところです。


川端:そのスペックにあった製品を低コストで作ることができるということですね。設備をすべて取り替えるわけではなく、その製造にあった部分についてコストを下げて作ることができる製法として、ということですね。

中田:はい。それとはまた別に樹脂の添加剤にも取り組んでいます。これはフィラー剤として、樹脂に60%~70%窒化アルミニウム顆粒を添加するのです。樹脂は非熱伝導材料です。そこに高熱伝導性のセラミックスを入れると熱伝導率が上がるために、それが市場で非常に注目されています。

同様に、炭化ケイ素(SiC)は高熱伝導率を持っていますが、これは残念ながら電気伝導性もあるのです。電気を通さず熱だけを通すのが窒化アルミや窒化ケイ素などのセラミックス材料です。そこに特徴があり、最近発売されている電気自動車等の熱伝導性物質の基板としても採用されています。

川端:電子部品には、電気伝導力が無く、熱伝導が良いものが適しています。発熱した半導体の熱がボードに逃げていく、ということになりますね。集積帯の熱をどの様に逃がすかということが問題になってきますので、とても重要なところだと思います。

中田:パソコンもスマホに対しても同様に適用させることができているので、そのような有望な商品開発用材料を目指していますが、現在は開発段階です。

アイデアのスケールアップ


牧内:いろいろと開発的なアクティビティとしては大学のフィールドではないのではないか、とも思うのですが、秋山先生が担当されている部分と燃焼合成が担当している部分の区分けは、どのようになっているのでしょうか?

中田:秋山研究室での技術開発は基礎的な開発で、製造プロセスまでは行かない項目です。たとえば、蛍光体としての光度が上がったとき、それの生産工程を我々が担えるか、ということがあります。共同研究の意味はそこにあると考えています。つまり、大学が開発した技術を市場ベースに載せることが弊社の役割になるという事です。

一方で、現在秋山研究室は「連続合成法」に取り組んでいます。細かいものをそのままで合成する製法です。粉砕しないということは高純度のセラミックスができるのです、つまり粉砕のときに入るコンタミを無くすことになるのです。

また、世の中はα型窒化ケイ素が主流で、β型窒化ケイ素を用いて部品を作ることについては未知数なのです。
それに特化した技術、高熱伝導率かつ高強度な部品を作る技術がある、非常に面白い会社があります。これら会社と秋山先生には、さまざまな工法を試したなかで「これを燃焼合成法でやったら面白い」といったようなアイデアを共有し、開発を進めるといったようなやり方になるのかもしれません。

このように「粉のまま窒化アルミの製造は可能か」、「連続燃焼合成ができないか」または「リチウムイオン電池の電極剤としてこの技術が使えないのか」など企業からのリクエストに応えるためには先生との共同研究を進めなければなりません。

世の中に広めるため、何十キロの単位で生産できるようスケールアップすることが、われわれの分担だと考えています。

川端:実用プラントを作る、ベンチマークまでのスケールアップですね。


中田:しかし開発にはお金がかかるのですが、現状では売り上げがあまりないため、スケールアップを図りたいが資金が不足して足踏み状態です。

そこで現在、窒化ケイ素と窒化アルミの粉体を中心に、これらの売り上げ増加を図りたいと考えているところです。粉体の販売には数社が興味を示してくれています。私たちの技術の特徴は燃焼合成という「プロセス」なのです。

川端:プロセスをベースにして、何十キロ単位での販売をした場合、相手からは「もっと大きなロットで納品してほしい」などの希望が出てきませんか?

中田:そうですね、私たちの製造単位は50キロなので、それ以上の単位で必要な場合には、お客様に対してスケールアップを含めた技術共用することも検討しています。

今後のビジョン

川端:秋山先生からのリクエストで、たとえばサイズアップしてみませんか等の話があると思うのですが、そのあたりの進め方をどの様にするか、共同研究等の話についてもお互いに検討してみる必要があるのかもしれません。

中田:弊社と秋山先生との共同研究というのが望ましいと思うのですが、なかなか簡単ではありません。秋山先生が開発した技術を燃焼合成が使えるようにする。企業側では生産技術にまで高めないと実用的ではないため、そのレベルにまで持って行くことが重要なのだと思っています。

この技術は5グラム~10グラムができて完成するものではなく、50キロ~100キロの製品を量産できるようになって始めて役に立つのだと思っています。

牧内:秋山先生の研究室に50キロのプラントが作れたら良い、ということでしょうか?


中田:研究室に設置するプラントの単位は、5キロでいいと思っています。私たちの研究室には5キロの炉がありますので、この「5Kg合成炉」を活用し、量産試作には、工場にある「50Kg炉」を使用する。量産技術としては、まずは5キロの炉を使って製品を作ることが第1ステップとする。秋山先生の研究室の炉を使い、その前の単位5グラムから10グラムを合成する基礎的な条件を検討する。その後で単位を大きくしていく工程へ、と現状はこのような住み分けとなっています。

川端:御社のビジョンはバラエティを増やさず、窒化物セラミックスに注目していくことで市場が開けてサイズアップ、スケールアップしたプラントを作る、そして一部上場などそういったことがビジョンになるのですね。

中田:継続的に確実な売り上げを出せる状態になって初めて、次の新しい発想へ向かう環境が整うと思っています。今はどのようにして、売り上げを伸ばすか、成長していくかを考えています。

牧内:ということはその環境が整ったときに秋山先生との新たなアイデアに着手できる、ということをお考えなのですね。

よくある大学発ベンチャーのパターンとしては、「Xという技術があります、しかしその開発には長期間が必要で(たとえば10年くらい)、会社存続のために行った事が会社のメインの事業となっていった」というパターンもありました。そういった意味としては、サイアロンからシフトしていくことになるのでしょうか。

中田:サイアロンには蛍光体として興味があり、5~20キロの単位で製造することができます。しかし単位が一桁大きくならないと大規模収入にはなりませんし、マーケット、製造単位共大きい方が良いと思われます。弊社がその一端を担う事が希望です。
川端:まずは5キロの単位で出来ること、それで部品の試作を他の企業が行うのですね。現状としてはその状況がどの様に進むか待っているという状況ですね。

中田:そのとおりです。製品としてはサイアロン、窒化ケイ素、窒化アルミの試作販売を行っています。まだ大学に貢献できていないのですが、それが実現可能となったときにはぜひとも、と思っています。売り上げの何パーセントかを使って大学に貢献したいという思いを持っています。

数年前に秋山先生と話していたことなのですが、将来的に現在の研究室が入っている建物「エネルギー・マテリアル」のビルを建て直せるくらいの寄付を弊社としてできるようになれたら、ということが夢の一つです。そう思っています。

大学との関係


牧内:そういった関係が継続できているというのは良いですね。大学との関係で何か気づいたことや、大学に望むことはありますか?

中田:燃焼合成技術は秋山先生ですが、それを使用して製造されたセラミックスの燒結の成形プロセスは先生が関与していらっしゃいませんので、その分野に関係している先生方にシフトしていくことを視野に入れ、次の方向や展開を考えていくことが望ましいと思います。

燃焼合成が作った「セラミックスの粉」で成型や燒結をしないと、特性が変わってしまいますので、そういったところを大学と協力しながら取り組みたいと思っています。

川端:企業には研究力のある研究所を持っているところがありますが、大学の場合は燒結の研究をしている先生もいると思います。

中田:企業と共同で行って良い結果が出たとして、データをもらうことはできるのですが製品化のノウハウは残らないのです。次に何があるか、という面に対してもご協力いただきたいと思います。

川端:数年前には燒結の研究を行っていた先生がいたようです。どの部分の燒結かによっても異なりますね。大学の存在自体、個々の研究を行っているということなのです。

中田:たとえば、開発して次のステージにつながる研究を行っている先生等の情報を教えて頂けるとありがたいと思っています。今後は中小企業や技術に特化した企業と情報交換しながら進めることになると思います。

牧内:シーズのアーリーステージからレイトステージのものを対象にしたVCに関する情報も随時お知らせしたいと考えています。北大発ベンチャーの皆さまに対しても、機構ではさまざまなセミナーや講演会などで情報提供をしていきたいと思っています。
こんな情報が欲しい、といった事などまずは気軽に問い合わせてください。
本日はありがとうございました。



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