研究者紹介

【ナノテクノロジー・材料】 (2017/08/24公開)

荻野 勲 准教授 大学院工学研究院 応用化学部門 材料化学工学研究室

触媒に情熱をそそぐ


研究者になりたいと強く思ったきっかけ


研究者になることに強いあこがれを抱いたのは,間違いなく米国留学の時だったと思います。私は,日本の大学院で修士論文のテーマとして触媒に関する研究に従事した後,卒業後企業においても触媒プロセスの研究開発に携わりました。その間,常に触媒の研究に興味をいだきつつも,研究を遂行する上で,自分の能力のなさを痛感する日々を過ごしていました。

その中で,縁があり機会を得たPh.D.コースへの留学経験は色々な点で自分の人生に良い影響を与えてくれました。何より,心から尊敬できる素晴らしい恩師らのもとで,情熱を持つ同僚達と切磋琢磨する中で研究者となるための土台となるものが養えたと初めて実感し,また研究者になりたいと心から思いました。Ph.D.コースそして大学教育全般の持つ重要性を痛感する機会でもあったと思います。

新しい触媒、機能性材料の合成を目指して


ゼオライト層状前駆体から得られるナノシート凝集体の構造的柔軟性を利用した触媒開発を目指しています。ゼオライトは,結晶性アルミノシリケートで,イオン交換能を有し,古くから衣料用洗剤のビルダーや吸着剤として利用されています。また,ゼオライトは分子サイズの微細孔(ミクロ孔)を有するため,分子ふるい能を発揮し,触媒として広く利用されています。

最近,ゼオライトの中でも比較的小さな細孔を有する材料が,分離膜や自動車用排ガス処理用触媒として工業化されるようになりました。またゼオライトと同様の構造を有するゼオライト類似物質も,メタノールからオレフィンを合成する触媒として工業化されています。ゼオライトは,一般に,工業プロセスにも耐えうる高い機械的強度と耐熱性を有しています。しかし,その堅牢な構造がゆえに,構造に柔軟性がなく開口径よりも大きな分子を結晶内に導入することは難しいという課題があります。

近年,研究されているゼオライト層状前駆体と呼ばれる材料は,厚さ数nmのゼオライトナノシートと結晶化に用いられる有機化合物(構造規定剤)が相互に積み重なった層状構造を有しています。これを焼成するとゼオライトナノシート同士が連結し,堅牢な構造を有するゼオライトができます。

我々は,このゼオライト層状前駆体の層間に存在する有機構造規定剤を除去すると構造に柔軟性が生まれ,層間に機能性分子を導入できるようになる点に着目し,通常のゼオライトでは導入の難しい活性種をミクロ孔内に導入した新しい触媒や機能性材料を合成することを目標にしています。層状化合物の層間に機能性分子のインタカレーションを行うことは,古くから粘土化合物などを使って行われてきました。しかし,ゼオライトナノシートには,分子サイズの微細孔がナノシートに垂直な方向に存在するものがあり,これを利用してゼオライト特有の新しい機能を生み出せるのではと期待しています。

産学連携・社会貢献に対する思い


産学両方を経験していく中で,基礎的かつ長期的な研究を行い,産業界での応用研究そして革新的な技術開発へとつなげることが大学の使命の一つではないかと思うようになりました。

自動車用排ガス処理触媒として,工業化されたゼオライトが最初に合成されたのは20年以上前のことだと聞きます。また,メタノールからオレフィンを合成する触媒反応プロセス開発は,基礎研究から30年近くかかったと聞きます。革新的な技術の開発には計り知れない程の年月と研究の積み重ねが必要という例なのかもしれません。

一方で,そのリスクをとり,すぐに出口が見えないチャレンジングな課題に十分なリソースを配分し,かつ研究者に自由を与え,研究者が革新的な発明を生みだせる環境を整えることは年々難しくなってきているのかもしれません。しかし,そうしたことを実行できるリーダーの養成を産学が協力して行うことが重要なのではないかと思います。また,産学両方が常にシーズとニーズを意識し合えるよう人材交流がより盛んになることを願います。

恩師の言葉「全ての開発の土台は基礎研究」を胸に,かつて駆け出しの研究者として抱いた純粋な夢を実現するにはどうすればよいか,また人材育成に自分はどのような貢献ができるかを模索する毎日です。

研究室ホームページ


大学院工学研究院 応用化学部門 材料化学工学研究室
http://mde-cp.eng.hokudai.ac.jp
北海道大学 TLO通信 創業デスク 北海道大学研究シーズ集 vol.4
食科学プラットフォーム 北海道大学URAステーション 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局