研究者紹介

【ライフサイエンス】 (2017/09/25公開)

津田 真寿美 准教授 大学院医学研究院 腫瘍病理学教室 及び国際連携研究教育局(GI-CoRE)

医学研究に携わる喜び


幼い頃より変わらない3つの思い


幼い頃より変わらずあるのは、生き物が好きということ、生命の神秘(謎解き)にワクワクするということ、医学に貢献したいという思い、の3点かもしれません。それらを満たすものが、現在の「がん研究」の道に繋がっているように思います。

最初から研究者になることを思い描いていた訳ではありませんが、学生時代や院生時代に魅力的な研究に触れさせて頂く中で、研究の楽しさや奥深さ、そして重要さを知ることができました。細胞内の蛋白質が複雑なネットワークを形成して細胞機能を生み出すことを初めて知った時の驚きや、細胞が動く様子をタイムラプス顕微鏡で初めて観察した時の感動は忘れられません。研究者となるまでいくつか岐路はありましたが、自らの意志で道を選択し、その道を叶えて頂ける環境があり、素晴らしい恩師や仲間達との出会いがあって、今の私を作って頂いたように思います。

研究者として生きていく覚悟ができたのは、大学院修了後、米国Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerへの留学が決まった頃でしょうか。これ以降、この道に迷いはありません。日々、医学研究に携われていることに、深い喜びと達成感を感じています。

新たながん幹細胞診断技術の確立と治療法の提供を目指して


私が所属する「腫瘍病理学教室」は、文字の如く、腫瘍の理(ことわり)を研究する教室です。医学の本質を見極めるため基礎研究をベースとしながら、トランスレーショナルパソロジー(橋渡し病理学)、その先の臨床応用を見据えています。基礎医学研究の中でも、「腫瘍研究」は特に多角的な知識や技術が求められる領域であると実感します。

私達は、病理学教室という特権を生かして、様々な癌腫(脳腫瘍、頭頸部癌、肺癌、膵癌、膀胱癌、大腸癌、卵巣癌、肉腫など)を研究対象とし、がんの発生・増殖・浸潤転移・腫瘍微小環境・癌幹細胞と治療耐性・遺伝子解析に基づく個別化医療やプレシジョン医療の提案・ドラッグデリバリーシステムの構築・人工知能(AI)による病理診断など、多岐に渡る研究を展開しています。
用いる解析技術も、生化学・細胞生物学・分子生物学的手法から、蛍光バイオイメージング、構造解析、動物実験、次世代シークエンサー(NGS)による遺伝子解析、AIなど多様です。

一見、specialtyがないように写るかもしれませんが、「がん」の本質を深く理解した上で効果的な治療戦略を立てるには、これらは全て必要な情報と考えます。そして今こそ、これまで蓄積した知見と培った技術を統合し、新たな見解と切り口で研究を展開する好機であると感じています。

現在、私を含め当教室が最も力を入れている研究の一つは、バイオマテリアルを用いたがん幹細胞標的プレシジョンメディシン(個別化医療)の開発です。これは、北海道大学国際連携研究教育局(GI-CoRE)ソフトマターグローバルステーション(GSS)の研究プロジェクトの一つとして推進しているものであり、北大先端生命科学院のグン教授らが開発した北大オリジナル合成高分子ハイドロゲル(Science 344, 161-162, 2014)を用いてがん幹細胞を迅速且つ積極的に誘導した上で、その性状を解析し、ハイドロゲルを起点とした新たながん幹細胞診断技術の確立と治療法の提供を目指すものです。

がんの根治には治療抵抗性を示すがん幹細胞の根絶が必須ですが、その数は少なく、従来法では癌幹細胞の分離と解析は困難でありました。私達は数種の合成高分子ハイドロゲル上で癌細胞を培養すると、24時間以内にsphereを形成して癌幹細胞マーカー分子の発現が亢進、in vivo腫瘍形成能を獲得することを明らかにしました(特許出願:2017-028833, 癌幹細胞の製造方法)。

この技術を用いることによって、がん幹細胞を標的とした薬剤スクリーニングを実施でき、将来的に発生の可能性がある再発腫瘍の性質を予測し、予防的治療薬を投与することが可能となります。

このプロジェクトには、当教室の教員・大学院生に加え、医学部学生や先端生命科学院の留学生らが参加し、大規模に研究を展開しています。医学とバイオマテリアルを融合して北大から先駆的な研究成果を発信すると共に、癌治療を始め再生医療など広く医学・医療の発展に貢献できる人材を北大で育成すべく取り組んでいます。

産学連携・社会貢献に対する思い


私達の研究成果は社会に還元されてこそ価値が認められる物であり、医療・医学分野への貢献は不可欠です。産学連携はその過程の中で必須のステップと考えます。上述のハイドロゲルを基盤としたがん幹細胞診断キットを提供する上でも、高品質且つ高精度のゲルの安定供給、癌幹細胞スクリーニング用の薬剤の確保、キット化、販売ルートの確立など、企業との連携は欠かせません。研究成果を滞る事なく迅速に社会に還元するために、産学間の情報交換と意思疎通は重要と考えます。

企業の特性として患者数の多いマーケットに重心を置かれがちですが、希少疾患であっても患者が存在する限り病態解明と治療法の開発は進めるべきであり、その部分は大学などアカデミアが先導を切って積極的に企業等に働きかける必要性があると感じています。

腫瘍病理学教室について


当教室には病理医に加えて、臨床医、臨床検査技師、他学部出身者、医学部学生、留学生など様々な立場の人が在籍し、各自のオリジナリティを大事にしつつ、協力して研究を展開しています。
北大他学部・他大学・海外の大学や研究所との共同研究、また産学連携研究も複数実施しています。

私自身はこれまでの研究人生の中で、素晴らしい師匠や仲間と巡り会ってきました。
若き学生や医師、研究者にとって、今度は私自身がそのような立場となれるように、研究と教育に精進していきたいと思っています。当教室の研究にご興味と意欲のある方、お待ちしています!

北海道大学院医学研究院 腫瘍病理学教室
http://patho2.med.hokudai.ac.jp/

国際連携研究教育局(GI-CoRE)
https://gi-core.oia.hokudai.ac.jp/main/

研究シーズ

合成高分子ゲルを用いた癌幹細胞標的プレシジョンメディシンの確立
北海道大学 北海道大学 研究者総覧 onちゃん北大事務局 北海道大学研究シーズ集Webサイト
EARTHonEDGE北海道 DEMOLA HOKKAIDO 創業デスク 北海道大学 産学連携メールマガジン