◇対談◇調和技研「AI技術を生かし、社会の役に立つ最先端テクノロジーを生み出していきたい」

※インタビューは取材日時点の情報ですので、内容やリンク先が変わっていることがあります


左から西井機構長、中村代表取締役


株式会社調和技研


  • 代表取締役 中村 拓哉


北海道大学大学院情報科学研究科




北海道大学産学・地域協働推進機構





株式会社調和技研は2009年11月、北大大学院情報科学研究科 調和系工学研究室から発足しました。情報学に基づいて、教育・臨床・研究を柱に実践を行うベンチャー企業です。

代表取締役社長の中村拓哉さんをはじめ、研究開発メンバー11人と、調和系工学研究室の川村秀憲先生や、はこだて未来大学の鈴木恵二先生が中心となり、大学や教育機関と連携を図りながら、事業展開を行っています。

今回はベンチャー立ち上げの経緯や大学との関わりを中心にお話を伺いました。
(2017年10月13日)

卒業生の「やってみたい」の気持ちから


調和系工学研究室 川村秀憲教授


牧内:まずは、調和系工学研究室の紹介をしていただけますか?

川村:うちの研究室は私で4代目の教授になり、設立から50年くらいが経ちます。人工知能に関わる技術を研究し、機械学習技術やディープラーニングに代表されるニューラルネットワークなどの研究をしています。

鈴木恵二先生と一緒にこの研究室で研究を行っていた時に、「AIの技術は社会活動に応用でき、社会サービスとして、人に使ってもらって始めて価値を発揮する。社会課題の解決につながるかどうかは使ってもらわないとわからない」ということを、よく話し合っていました。学部は研究室設立時、工学部所属なのもあり、ものづくりを行うことを意識しています。もちろん学会発表で研究成果をあげることも重要です。

牧内:ベンチャーを設立したきっかけは何ですか?

川村:当時、ドクターを取得した卒業生が、ベンチャーに興味を持っていました。また、ベンチャーブームの追い風もあり、研究室内で行っていることを少しずつ社会に出していく気持ちで、実証実験のような形でベンチャーをスタートさせました。

今は当たり前となった検索推薦エンジンは、当時Amazonで導入されているかどうかのような時期です。ITに関わる機械学習やディープラーニング、ロボットや推薦エンジンの作成などをやっていました。そのひとつひとつは、AIのサービスに欠かせないものとなります。それを大学の研究者だけで行うと、実証実験の期間中にサーバーのメンテナンスをして、その結果をまとめるだけになってしまう。研究が社会に必要ならば、持続可能なサービスが展開できるかもしれないと考えたのがベンチャー設立の経緯です。

牧内:創業はいつですか?

川村:創業は2009年の11月4日です。中村さんが入る前は、会社として、部屋を構えて固定費を払うというより、学生が好きなことをして、アルバイト代を貰うといった感じのサークルのような雰囲気でした。そのうち外部の方からの仕事の依頼があり、きちんとした形にしなければと考えていた時、中村さんがメンバーに加わってくれました。


「北大生と一緒に北大グルメEXPOという
イベントも開催しました」と話す中村社長


牧内:それはいつ頃ですか?

中村:今から7年ほど前です。当時私は、日立の人事部で仕事をしていたため、東京から北海道までの大学を回っていました。その頃、学生時代に培った力を発揮できず悩んでいる社員の様子を見て若いうちに実践的な経験をさせたいと考えていました。そんな中、何度も仕事で北大にお邪魔する機会があり、鈴木先生や川村先生から会社を作るというお話をお聞きしました。

ちょうど若い人に何とか実践力を養ってもらいたいと考えていたので、研究室発の調和技研を成長させる為のお手伝いになればと、しばらくは縁の下の力持ちのような関係でスタートしました。その後、私の出身が札幌ということもあり、調和技研が開発した興味解析エンジンは地域活性に繋がると信じていたので、会社を辞め本格的に挑戦することにしました。
   
川村:中村さんはもともと銀行マンでした。その後、日立に行かれて、マネジメントや人事に携わった方なので、僕らに一番足りないものを持っています。とてもいい人が見つかり、僕らは研究に集中できています。

AI技術が繋ぐ可能性

川村:事業内容を少しお話します。イベント情報の推薦エンジンシステムを事業としてやっています。総務省の戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)などを頂いて研究を行っています。最終的に研究の実証結果を、サービス化すること問われていますが、ITサービスだと3年や5年などの研究期間を経て、サービス化に踏み切ると、時代のスピードについていけません。


その結果作ったものは、全く使えないサービスとなってしまいます。僕らは研究部分を引き受けて、実証段階の部分を小回りの利くベンチャーが対応することで、ビジネスとして成り立つ仕組みを考えました。効率よく資金を使い、新たな挑戦を行い一つでも多く形にしていくことを目的としています。

牧内:今、AIがブームなっているかと思います。その辺の状況はどうなっていますか?

中村:以前は専門的で難解な言葉で私たちがやりたい事業をお客様に説明していましたが、2年半程前からAIいう象徴的な言葉に切り替えたところ、東京の研究所の方から先端的技術に関連する研究委託の依頼が入るようになりました。

ちょうどその頃、草の根的に活動しているAIの取り組みをあるところで発表したら、札幌市が興味を示してくださり、産業振興財団や札幌市などと一緒に、17年の6月にAI産業の活性化を目指す「sapporo AI Lab(ラボ)」の立ち上げまで進みました。


牧内:御社のAI商品にはどのようなのもがありますか?

中村:最初に開発した実績としては、Cikappo(チカッポ)というTwitter炎上発生予測があります。このシステムは、SNS上のテキストを機械学習により解析し、炎上の危険性を予測したり警告したりします。

このサービスの実証実験では、Jリーグの選手とファンの方が交流をする際に炎上が起きないかを解析し予測するサービスを作りました。研究を続けるうちにだんだんと自然言語解析の研究が主体となり今は、「会話はどうして成り立つのか」ということをテーマに博士を取得した研究員を中心に継続しています。コミュニケーションロボットの研究です。

川村:他の企業との共同研究では、北大工学部出身の社長さんが経営している株式会社クレスコという一部上場のITベンダー企業があります。その会社と共同研究を行い、会話エージェントシステムの実証実験をさせていただきました。

牧内:それは北大に対する研究依頼ではなく、調和技研に対する研究の依頼ですか?

川村:僕らはAIのアカデミックな研究に集中したいと考えています。システムやロボットを作ることは、ビジネスとしてやる方がいいと考えているので、中村さんがマネジメントしています。

北大の研究室と共に歩むこと、その先へ

西井:これから先、北海道を活動拠点にして頑張っていこうと思っていますか?

中村:そうですね。北海道での活動、ひいては地域への貢献には強いこだわりがあります。企業に勤めている方で思うように仕事ができず、チャレンジングな研究をやってみたいという人はたくさんいると思います。そのような方たちが、自分の好きな研究に専念してもらうには、この北海道の環境は最適です。実際東京へ就職した方が戻ってきて、私達と一緒に研究したいといった応募が数多くあります。

西井:設備投資はコンピュータだけですか?

中村:コンピュータ以外の設備投資はあまりしていません。必要なのは人材の育成です。研究をしやすい環境でやりたいことができる。その環境を作ることです。

牧内: 人を増やしていこうという意向はありますか?


オフィスには規則正しいリズムが響く


中村:最近悩んでいます。難しい問題ですね。人を教育しながら実践的に高度なスキルを身に着けて欲しいのですが、社員が12、3人くらいになってくると、いい環境を作ることが難しくなってきます。
今のところ、少数精鋭の方が自分たちの経営には合っています。営業や経理など専門の方を雇い入れるより、得意な方にお願いする方が独自性のある環境を作れる気がします。

川村:この前、象徴的なことがありました。最近Uターンで入社した社員は、実はうちの研究室の卒業生です。学生の頃はAIに関わる研究をずっとやっていました。東京の会社に就職して、一度北海道を離れましたが、どうしても札幌に帰ってきたいということで、調和技研に就職しました。

学生時代は修士まで勉強して、先端の研究を行っていたのが、一旦就職すると、全く違うことをやっている。大学で学んだ知見を活かすことができない状況があります。本人が満足していればそれでいいと思いますが、必ずしもそうではありません。同じケースはたくさんあって、その状況を何とか変えていきたいと思っています。

西井:大学院教育もこれからどんどん変わっていくと思います。学生が民間企業に就職してまた帰ってくる。企業の方が大学に学びに来る意味においては、皆さんの取り組みはモデルケースになる可能性が高いですね。

牧内:最後になります。大学に対してのお願いはありますか?

中村:今の段階では、かなり満足しています。一点だけあるとしたら、もう一度勉強したいと考えている社会人の方に対して、大学教育を受けながら、働ける環境が作れるといいと感じています。会社も努力しなければならないですが、もう少し通いやすい環境にしていただけると有難いです。

牧内:先生の方はどうですか?

川村:昔と今では大学の在り方が変化してきています。民間の企業の方との共同研究や、他の機関との連携を今よりもっと考える必要が出てきました。それを考えたときに、今我々が取り組んでいることがひとつのモデルケースとして、人の交流や情報の共有に活用して、北大から全国に発信していただきたいです。また、社会人ドクターとして受け入れるために連携することが、人材育成につながると思います。その環境を一緒に提供できたらと思います。


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