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産学連携本部ワンストップ窓口連絡先 北海道大学

北海道農業における産学連携

2007/07/17

タマネギから始まる農産物のブランド構築

有限会社 植物育種研究所 取締役社長 岡本 大作氏

はじめに

今回は、北海道産高付加価値農産物の研究開発を進めている岡本大作氏を訪ねた。岡本氏は36歳。学生時代に「有限会社食物育種研究所」を設立した大学発ベンチャーの中でも異色の存在だ。起業にあたっては、道内大学の研究成果の事業化に携わる北海道ティー・エル・オーが主導的に支援をした。「発想が面白く、将来の北海道農業に寄与する可能性」が評価された結果である。
北海道大学農学部生から、種苗会社やデンマーク国立研究所での実務、そして、北大大学院での研究生活、起業と岡本氏が一貫して考えてきたのは、「北海道の優位性を活かした農産品ブランド」の確立だ。現在、北海道の特産品であるタマネギの品種改良を通じて農産品のブランド構築を目指している岡本氏に、新品種の研究開発状況や農産物流通システムのあり方についてお話を伺った。

注目されるタマネギの魅力

岡本氏が力を入れているのは、タマネギの新品種開発だ。古来、世界各地では「様々な種類のタマネギが栽培されてきたが、本格的に日本で導入されたのは明治時代。現在、日本は世界有数のタマネギ生産国である。そして、タマネギの国内生産量の50%以上を北海道産が占めている。北海道産タマネギのほとんどは春に種を蒔き、秋に収穫する晩生の黄タマネギである。

近年、注目されているのはタマネギの効能である。タマネギには、抗ガン作用や高血圧・動脈硬化の予防抑制、アレルギーの抑制効果などが認められており、それらの効果は主にフラボノイドの一種「ケルセチン」によるものだ。ケルセチンはタマネギのほかに、緑茶やリンゴ、赤ワインなどにも含まれているが、タマネギ内のケルセチンが最も吸収が良いものであることが分かっている。

市場競争に勝てるタマネギの開発

現在、岡本氏は在来種「札幌黄(きい)」の品種改良と、ケルセチンを安定かつ大量に含んだタマネギの開発を進めている。

在来種である札幌黄は、糖度が高くて切りやすく、熱を加えると柔らかくなるといった特性から全国的に広く普及したが、病気に弱く型崩れする短所もあることから栽培が難しくなり、やがて札幌黄の生産に携わる農家が減少していった。現在、市場に流通しているものは、在来種とアメリカ種を掛け合わせたF1種(一代交配種)が主流となっている。

岡本氏は、札幌黄の特長を活かしつつ、糖度をさらに高め、保存が利く新しい札幌黄の品種改良を行っている。北海道で生まれた札幌黄をさらに品質の良いものにすることで、「地産地消」を進めるとともに、道外へ北海道ブランドのタマネギを打ち出していきたいと考えている。

その他に、岡本氏が取り組んでいるのが高機能性タマネギの研究開発だ。タマネギのケルセチンは非常に優れているものの、その容量が不安定なことが加工を難しくしている。そこで、岡本氏は品種改良によって本州産タマネギの約3倍のケルセチンを含むタマネギの開発を行い成功、現在量産化に向けた研究を進めている。近年、健康食品会社がケルセチンの効能に注目、栄養剤として発売をしているが、岡本氏は「本来、自然な野菜そのものの形でケルセチンを摂取することが望ましいのです。そのためにうまく摂取ができるように加工技術も検討しています。」と語る。

これらの品種改良により、日本産と比べ4割以上も価格が安い中国産のタマネギとの差別化が図れると岡本氏は考えている。

農産物流通システム改革に向けて

岡本氏は、単に農産物の新品種開発を行うだけではなく、研究開発から生産、加工、流通に至るまでのプロセスに対して積極的に関与することを目指している。

現在の農産物生産は、流通を第一に考えた生産システムを取っている。流通や長期保存に耐えられるように品種改良され、同品質・同規格・同サイズ等の大量生産方式に合う規格ばかりになり、消費者が真に求めている農産物が手に入りにくい状態にある。勿論、消費者にとっては「外れ」の無い商品が入手できるのだが、そこには個性はない。岡本氏が目指すのは、シェアナンバーワンを目指す産品ではなく、消費者のニーズに対応したオンリーワン産品の開発とそれに伴う流通システムの確立だ。

「種の開発が成功した上で、地元農家が精算した農産物を買い上げ、ブランディングを行い、地元の工場で加工し、流通ベースに乗せる。」これが岡本氏の描く戦略だ。「地元に雇用を生み出し、地元にお金が落ちるような農産物流通システムを作り上げることが北海道の農村には必要だと強く感じます。」岡本氏自身、妻の実家がある栗山町内で約60アールのタマネギ畑の中、地元の農家とともに農作業に従事している。実験室だけからは生まれてこない岡本氏の発想はここから生まれている。

農業ベンチャーにおける産学官連携

農産物流通システムの改革は、単独では難しい。生産・加工・流通の各段階において、公的研究機関やベンチャー支援企業、大学などとの共同作業になる。資金面でも同様だ。
これまでに、北海道農業研究センター、ノーステック財団、(株)ヒューマン・キャピタル・マネジメント、北海道中小企業総合支援センター、そして北海道大学の支援を受けて課題に取り組んできた。

岡本氏は北海道大学発ベンチャーの先鞭として、ベンチャーの形態について次のように語っている。「北海道における大学発ベンチャーには3つの形態があります。一つは、大学の教壇に立ちながら、研究室の成果を基に起業するパターン。これが主流です。もしくは、本州の大手企業から資本を得ながら共同研究で進めていく形式です。しかし、これら2つのパターンでは、北海道から最終的な成果が流出する可能性があります。これからのベンチャーは、北海道に利益を残す形を考えるべきです。一個人がベンチャー企業を立ち上げることは資金面ではとても厳しいものがあります。でも、生産技術や栽培ノウハウを蓄え、大学のネットワークと連携しながら北海道に還元できる仕組みを作ろうと思います。」

明治4年、開拓使次官の黒田清隆が渡米し、北海道開拓に必要な機械、種子などを購入して帰国し、札幌で試作されたのが、日本のタマネギ栽培の始まりである。そして、札幌農学校(現北海道大学)で栽培に成功し、札幌黄が生まれた。北大出身の岡本氏が、新しいタマネギ作りに情熱を燃やしているのは、こういった北海道の歴史的土壌がその原動力の一つになっているに違いない。

会社概要

有限会社 植物育種研究所

本社:北海道夕張郡栗山町中央2丁目6番地
札幌事務所:北海道札幌市中央区大通西5丁目8番地昭和ビル8階 HCMインキュベーションセンター

資本金 3,000,000円
取締役社長 岡本 大作

業務内容 
(1)タマネギの新品種および機能性成分に関する研究開発
(1)草花新品種の開発、種苗生産、販売