【北大スタートアップレポート第二回】北大のスタートアップに飛躍の春来たり
2021.03.09
今回の記事は、中小企業基盤整備機構(中小機構)北大ビジネス・スプリング(以下、北大BS)主催セミナーについての開催レポートとなります。神戸市の先進事例や北海道大学におけるスタートアップ事例、政府系機関によるスタートアップへの支援メニュー、そして総長に就任された寳金清博氏の本音の熱い想いの中で、「来たれ!意志ある北大人」という北海道大学におけるスタートアップ支援の全貌が見えてきました。
アントレプレナーシップという言葉を聞いたことがあるでしょうか。その歴史は古く、「商業試論」(フランスの銀行家リチャード・カンティロン著)が公刊された1755年まで遡ります。もちろん、当時と現在ではアントレプレナー(entrepreneur)の意味合いは異なります。ここでは、リスクを取る専門家として定義されていますが、現在でもリスクを取って事業をするという意味で用いられています。
言葉の由来はさておき、北海道大学でもリスクを取って事業を興す素地が着々と整ってきています。今回取り上げるセミナーは、総長である寳金清博氏がショートレクチャーを行ったことからも分かるように、大学全体で推進している目玉プロジェクトの一つです。
最初の神戸市におけるスタートアップ支援先進事例について、スタートアップ支援で市と協力するリバネス(東京・新宿)の丸幸弘最高経営責任者(CEO)によって基調講演がありました。1998年に、阪神・淡路大震災の震災復興プロジェクトとして始まった神戸医療産業都市構想。今では、370社・団体(2020年1月末現在)が集結し、ライフサイエンス分野の研究開発拠点として多くのスタートアップを輩出しています。丸氏からは、スタートアップ支援がまちづくりに繋がるという興味深い示唆が提示され、著者も札幌をはじめ道内の市町村が大いに参考にできる点だと認識しました。
次のトークセッションでは、北海道大学脳神経外科発のバイオベンチャー、株式会社RAINBOW創業者と創業から支援してきた産学連携推進本部職員・北大BSインキュベーションマネージャーの方によるこれまでの歩みが赤裸々に語られました。創業者は北海道大学脳神経外科の医師2人であり、再生医療の技術を用いて治らないと言われている脳の病気を治すために起業したといいます。資本政策をはじめとする経営に必要な知識・スキルを習得すると同時に、北大BSインキュベーションマネージャーの方と濃密なコミュニケーションを重ねながら幾多の経営課題を乗り越えてきたトークセッションは聞いているだけでも胸が熱くなるお話でした。中でも、「研究内容をいかに特許化するか」、「治験費用の調達」といった問題を二人三脚で解決してきた道のりは、多くの大学発ベンチャーに当てはまるのではないでしょうか。他にも、産学連携推進本部職員・北大BSインキュベーションマネージャーの方のひたむきな想いなどあっという間の1時間でした。
独立行政法人中小企業基盤整備機構をはじめとする、政府系9機関のスタートアップ支援施策等の紹介を挟み、最後にお待ちかねの北大総長の寳金清博氏によるショートレクチャーです。大学総長の口から語られるアントレプレナーシップに関する話からは、今後学生・研究者のスタートアップ支援だけでなく、多方面でのバックアップが期待できることが分かりました。その話しぶりからも、総長一丸となって研究者、学生の起業を支援する姿勢が伺えます。レクチャーの中で総長の本音が出た場面も何度かあり、ぜひ一度動画を見てみることをお勧めします。
ここまで、セミナーの報告をしてきましたが北大のスタートアップ支援に対する本気度には率直に目を見張るものがありました。資金的な支援だけでなく、資本政策や知的財産の法律面でのサポートなど大学で起業する環境はかつてないほど整ってきているのではないでしょうか。今回取り上げた、株式会社RAINBOWは北大発バイオベンチャーとして昨年2020年に1.5億円の資金調達をするなど今後の成長が見込まれます。他にも北大発ベンチャーが出てきており、産学連携推進本部・北大BSの手厚い支援を追い風に技術を生かしたスタートアップの勃興を期待したいと思います。
作成:北海道大学農学部農業経済学科4年 池谷 航
詳細:独立行政法人中小企業基盤整備機構北海道本部北大ビジネス・スプリング
詳細:独立行政法人中小企業基盤整備機構北海道本部北大ビジネス・スプリング